目次
1.越境ECとは

越境ECとは、日本国内の事業者が自社のECサイトや海外向けECプラットフォームを通じて、海外の消費者へ商品やサービスを販売するビジネスモデルを指します。インターネットを介して国境を越えて取引を行う点が特徴であり、近年は世界的なEC市場の拡大に伴い、多くの日本企業が海外販路の獲得手段として注目しています。
従来、海外に商品を販売するためには、現地法人の設立や代理店契約、複雑な物流体制の構築が求められていました。しかし、越境ECの普及により、これらを行わずとも比較的低コストかつ短期間で海外市場へ参入することが可能になりました。特に、AmazonやShopify、eBayなどの国際的なプラットフォームが充実したことで、海外消費者との直接取引が容易になり、中小企業にとっても海外販売が現実的な選択肢となっています。
越境ECが広がる背景としては、グローバルなEC需要の高まりに加え、クレジットカードやオンライン決済の普及、国際物流の効率化が挙げられます。また、SNSを活用したマーケティングやインフルエンサーの影響により、日本製品の魅力が海外へ伝わりやすくなったことも追い風となっています。
もっとも、越境ECは単に商品を海外へ発送すればよいというものではなく、各国の税制や輸入規制、プラットフォームごとのルールを十分に理解する必要があります。特に、消費税やGST、関税といった税務対応、返品制度、個人情報保護規制などへの適切な対応が求められます。このように、越境ECは大きなビジネスチャンスをもたらす一方で、法務・税務・物流など複数の視点から慎重な検討が必要となるビジネスモデルといえます。
2.オーストラリアにおける市場規模

オーストラリアのEC市場は、国内消費を背景に着実な成長を続けています。統計によれば、2024年のオーストラリアのEC市場規模は約371億米ドル(約5兆8,346億円)と見込まれており、全小売市場における存在感を強めています。これは国内総生産(GDP)が安定成長を続ける先進国市場の中でも、消費者のオンライン購入が定着していることの表れです。
オーストラリアにおけるオンラインショッピングは、消費者のライフスタイル変化やデジタル決済の普及を背景に成長しており、その影響はカテゴリ別の売上構造にも表れています。最新の市場データによると、家電・電子機器(Electronics)がEC売上の約23%を占め、もっとも大きなカテゴリとなっています。次いで幅広い商品を扱うバラエティストア、食品・雑貨、ファッション、ホビー・レジャー用品、ヘルス&ビューティーといったカテゴリがオンライン販売の主要セグメントとして位置付けられています。
具体的には、2024年のオンライン売上構造として、ホーム&ガーデンやバラエティストアがそれぞれ高い売上を維持しており、ホーム&ガーデンでは100億ドル超の売上、食品・飲料も80億ドル程度といったオンライン消費が観測されています。これらは店舗での購買からオンラインへのシフトが進んでいることを示しています。
また、オーストラリアのネット購入者の割合は高く、2024年時点で約65.3%の人がオンラインショッピングを利用しているとされ、インターネットの普及率の高さや配送インフラの整備がEC利用を後押ししています。
家庭のオンライン購入の割合が高い背景には、都市部だけでなく地方・遠隔地の消費者がインターネットを通じて商品を購入する傾向が強まっていることも挙げられます。
支払い方法に関しては、伝統的なクレジットカードやデビットカードが大きなシェアを占める一方で、「Buy Now, Pay Later(BNPL)」と呼ばれる後払いサービスが若年層を中心に急速に普及している点も特徴です。BNPLは従来の決済手段とは異なる消費パターンを創出し、EC利用をさらに促進する一因となっています。
クロスボーダー(越境)ECの割合も増加傾向にあり、調査によれば国内EC全体の約14.1%が海外からの商品購入を占めているとされます。これはオーストラリアの消費者が海外製品へアクセスしやすい環境が整いつつあることを示し、日本を含む海外事業者にとって参入の機会が拡大していることを意味しています。
このように、オーストラリアのEC市場は既に小売全体の重要なチャネルとして確立されており、製品カテゴリごとの売上構造が多様化している点、オンライン購入者が広範囲に存在する点、および支払いインフラや消費傾向がデジタル化に対応している点が特徴です。これらの要素は、今後越境ECを展開する事業者にとって重要な基礎情報となるでしょう。
3.オーストラリアにおける越境ECの今後の展望

オーストラリアのEC市場は、すでに高い普及率と成長基盤を持つ成熟途上のデジタル消費市場として位置づけられており、今後の展望も非常に明るいものとなっています。前章で述べたとおり、2024年のEC市場規模は約371億米ドルに達すると推計されており、国内消費者のオンライン購買行動の定着が進んでいます。これを受けて、市場全体は2024〜2029年に年間平均約9.36%(CAGR)の成長率で拡大し、2029年には約580億米ドル規模に達する見込みです。
この成長は単なる国内ECにとどまらず、越境EC(クロスボーダーEC)への関心と取引量の増加にも直結しています。市場調査によると、2024年のオーストラリアにおける越境ECの割合はEC全体の約20%に達しており、消費者が海外の製品やブランドをオンラインで積極的に購入していることが示されています。これは、オーストラリア消費者が国際的な製品を求める傾向が強まっていることの表れです。
さらに、ユーザーのオンライン購買行動の成熟は今後も進む見込みで、インターネット普及率の高さとスマートフォン利用率のさらなる上昇が市場成長の後押しとなるでしょう。既に多数の世代でオンラインショッピングが一般化しており、若年層だけでなく、ミレニアル世代からベビーブーマーまで幅広い層がECを日常的に利用しています。
オーストラリアのEC市場では、モバイルコマース(スマホ利用のEC取引)の比率が高まっている点も重要です。多くの消費者がスマホで商品を閲覧・購入するようになったことにより、プラットフォームやブランド側はモバイル最適化やUX(ユーザー体験)の改善を進めています。これにより、海外ブランドがオーストラリア消費者にリーチする際のハードルが下がり、越境ECによる販売機会が増加することが期待されています。
物流や決済インフラの進化もオーストラリアEC市場の拡大を支えています。特に越境ECでは、配送スピードの向上とコスト効率の改善が進行中であり、これが海外製品の購入意欲をさらに高めています。また、後払いサービスやデジタルウォレットといった多様な決済手段の普及により、消費者のオンラインでの購買意欲が後押しされています。
一方で、競争環境の激化も見逃せません。海外の大手ECプラットフォームや小売業者がオーストラリア市場で存在感を強めており、これらは国内企業や越境EC事業者にとって挑戦となる一方、消費者にとっては選択肢が増えるという側面もあります。今後、ローカルプレイヤーと海外企業との競争がどのように展開していくかは、オーストラリア市場の越境ECのあり方を左右する主要なポイントとなるでしょう。
総じて、オーストラリアのEC市場は今後も堅調に成長し、越境ECの取引機会がさらに拡大する見込みです。消費者のデジタル購買行動の成熟、決済・物流インフラの向上、そして多様な商品ニーズの増加が、海外事業者にとって大きな追い風となると考えられます。
4.オーストラリア向け越境ECがおすすめの理由

4-1. 日本製品の人気が高い
オーストラリア市場では、日本製品に対する信頼性と人気が非常に高く、越境ECを展開するうえで大きな強みとなります。特に、日本製品は「品質が高い」「長持ちする」「安全基準が厳格」というイメージが定着しており、生活雑貨、化粧品、健康食品、家電、ベビー用品など幅広い分野で高く評価されています。オーストラリアでは多文化社会が形成されていることから、多様な価値観を持つ消費者が存在しますが、そのなかでも「日本製=安心・高品質」という認識は共通しており、ブランド力そのものが商品の訴求力となりやすい点が特徴です。
さらに、オーストラリアはアジア圏の文化に対して比較的オープンで、日本の食品・飲料、ファッション、アニメ・キャラクター商品など、日本文化を背景とするアイテムへの需要も増加しています。特に健康志向の高まりにより、日本のサプリメントや自然派スキンケアなどは現地のトレンドと相性が良く、オンラインを中心に安定した人気を獲得しています。
こうした日本製品の支持は、越境EC事業者にとって「現地での認知獲得コストを抑えられる」というメリットももたらします。すでに高いブランド評価を持つカテゴリでは、比較的短期間でファン層を形成しやすく、現地販売店を介さずとも直接販売モデルで成功しやすい環境が整っています。品質志向の市場において、日本製品は継続的に選ばれる可能性が高く、越境EC展開における重要な強みといえるでしょう。
4-2. 越境ECのニーズが高い
オーストラリアでは越境ECの利用率が高く、消費者が海外の商品を積極的にオンラインで購入する傾向が顕著です。統計によれば、EC全体の約2割が海外からの購入であり、日用品からファッション、電子機器、コスメまで幅広いジャンルで越境商品の需要が存在しています。オーストラリアは都市部と地方の格差が大きく、地方では物理的な店舗数が限られることから、オンラインを通じて海外商品へアクセスするニーズが自然と高まっています。
また、オーストラリアの消費者は新しいブランドや海外のトレンドを取り入れることに積極的であり、国内にない商品や日本・アジア圏のアイテムを探索する購買行動が強く見られます。特に、美容・健康関連の製品、食品、キッチン用品、ベビー用品などは、海外ブランドが強い支持を得ているカテゴリで、品質に対する期待も高いことから、日本企業にとって参入機会が大きい分野といえます。
越境ECの利用が進む背景には、国際物流の整備や後払いサービス(BNPL)など多様な決済手段の普及があり、海外からの購入をスムーズにする環境が整っていることも影響しています。さらに、SNSやインフルエンサー文化が浸透したことで、オーストラリア消費者は海外発の商品情報にアクセスしやすく、越境購買が自然な行動として定着しています。
このように越境ECの需要が高いオーストラリアでは、海外事業者が魅力的な市場ニーズに対応できれば、比較的短期間で顧客獲得が可能となります。市場全体が越境ECに前向きな状況であるため、日本企業にとっても参入しやすく、成長機会を見込める市場といえるでしょう。
4-3. 日本との時差が少ない
オーストラリア市場に越境ECを展開するうえで、日本との時差が小さい点は大きなメリットとなります。オーストラリアは地域によって異なるものの、日本との時差がわずか1〜2時間程度と非常に小さく、リアルタイムでの顧客対応や業務運営がスムーズに行える環境が整っています。
越境ECでは、顧客からの問い合わせ対応、注文処理、トラブル対応といったコミュニケーションが不可欠です。時差が大きい欧米向けの越境ECでは、どうしても問い合わせへの回答が遅れやすく、顧客満足度に影響を与えることがあります。一方、オーストラリア向けであれば、日本の営業時間内に大半の業務対応を完結させることができ、購入後のフォローアップや配送状況の連絡などをタイムリーに行うことが可能です。
また、業務のスピード感が求められる広告運用やSNSマーケティングにおいても、時差が小さいことでリアルタイム調整がしやすく、運用効率が高まります。オーストラリアではInstagram・TikTokなどSNSの利用率が高いため、リアルタイムのトレンドに合わせて投稿や広告変更を行う際にも、日本から迅速に対応できる利点があります。
加えて、現地パートナー企業とのやり取りも時差が少ないことで進行が早く、物流やカスタマーサポートの調整も円滑に進められます。これは中小企業にとって特に大きなメリットであり、追加のシフト体制や夜間対応を必要とせず、効率的に越境ECを運営することが可能です。
このように、日本との時差の小ささは業務効率、顧客満足度、マーケティングの即応性といった複数の面で大きな利点をもたらし、越境ECを展開する企業にとって非常に魅力的な条件といえます。
5.海外進出・海外展開における影響

5-1.多文化を意識する必要がある
オーストラリアは多民族国家として知られ、ヨーロッパ系、アジア系、先住民を含む多様な文化背景を持つ人々が共存しています。そのため、越境ECを展開する際には、ターゲットとする消費者層の文化的背景や価値観を理解した商品訴求が重要です。たとえば、美容・健康分野では肌質や体質の違い、食品分野では宗教・健康上の制限(ベジタリアン・ハラール・アレルギー表示など)が購買行動に大きく影響します。これらを十分に理解しないまま販売すると、期待する効果を得られないだけでなく、不信感を与える可能性もあります。
また、商品説明や広告表現においても多文化社会特有の配慮が求められます。文化的偏りを含まないニュートラルなメッセージを意識し、現地の消費者に寄り添ったローカライズが必要です。SNSマーケティングでも、文化や価値観に敏感なユーザーが多いため、不適切な表現が批判を招くリスクがあります。オーストラリア向け越境ECでは、文化的理解を踏まえたコミュニケーションが、信頼構築の重要な鍵となります。
5-2.配送コストに注意する必要がある
オーストラリアで越境ECを行う際に頻繁に課題となるのが、配送コストの高さです。オーストラリアは国土が広大で人口密度が低く、都市間の距離も大きいため、他国に比べて国内外の配送コストが上昇しやすい特徴があります。特に日本からの国際発送では、航空便が中心となり送料が高額になりやすいため、送料負担をどのように設定するかが事業計画を左右します。
また、オーストラリア国内でも都市部と地方で配送費が大きく異なるケースが多く、地方への配送では追加料金が発生することも珍しくありません。これにより、商品価格や利益率に影響が出る可能性があります。さらに、配送にかかる日数も地域によって差があり、物流業者の選定や発送拠点の設定が重要となります。
越境EC事業者としては、FBA(Fulfillment by Amazon)や海外倉庫の活用、一定金額以上の送料無料ラインの設定など、配送コストを抑えるための施策を検討する必要があります。配送費の設計は購入率に大きく影響するため、事前のリサーチと最適化が欠かせません。自社サイトを軸にビジネスを運用する場合も、送料表示や配送条件を分かりやすく整えることが重要です。
6.越境EC事業に関するお悩みは専門家にご相談ください

オーストラリア向けの越境ECは、日本にいながら幅広いオーストラリアの消費者へ商品を届けることができる非常に魅力的なビジネスモデルです。特にオーストラリアはEC普及率が高く、日本製品への信頼も厚いことから、初めて海外市場に挑戦する企業にとって参入しやすい市場といえます。一方で、国際配送コストの高さや多文化社会ならではの消費者特性、GST(Goods and Services Tax)などの税制対応など、事前に理解しておくべきポイントも少なくありません。
実務面では、「配送コストが高く利益が圧迫される」「多文化社会への対応方法がわからない」「現地の輸入規制・GST登録の要否が不明」といった課題に直面するケースが多く見られます。また、オーストラリアは広大な国土を持つため、地域によって配送日数や配送費が大きく異なる点も、国内ECとは異なる難しさの一つです。これらを十分に把握しないまま販売を開始すると、想定外のコスト発生や顧客満足度の低下というリスクにつながる可能性があります。
こうしたリスクを避け、越境EC事業を安定的に成長させるためには、オーストラリアの法規制・税務・物流に精通した専門家のサポートを活用することが有効です。例えば、国際物流の最適化を提案できるパートナー企業や、GST対応やコンプライアンスに精通した法律・税務アドバイザーと連携することで、トラブルの少ない運営体制を構築できます。また、現地の消費者嗜好や文化的背景に沿った販売戦略を設計できる専門家の支援も大きな助けとなります。
近年では、越境EC支援を専門とする法律事務所やコンサルティング会社も増えており、商品登録、表記ルールの整備、広告運用、アカウント管理など幅広い支援サービスが提供されています。オーストラリア向け越境ECは大きなビジネスチャンスを秘めていますが、成功の鍵となるのは「適切な事前準備」と「正しい情報に基づく判断」です。もし不安や課題を抱えている場合は、無理に独力で対応しようとせず、専門家の知見を活用することで、より安心かつ確実に事業を成長させることができます。





