目次
1.はじめに
世界では63億7800万人もの人がスマートフォンを所有しており、モバイル端末は人々の日常生活の一部となっています。
特にミレニアル世代とZ世代は、24時間365日、スマートフォンとともに過ごしています。朝起きて最初にチェックするのはメッセージやメール、ニュースであり、夜遅くまで動画視聴やソーシャルメディアの閲覧を続けています。請求書の支払いから天気予報の確認、ナビゲーション利用に至るまで、日々の生活タスクの多くがスマートフォンを介して行われており、オンラインショッピングも例外ではありません。
この消費者行動の変化は、越境ECの領域でモバイルコマースの重要性を強調しています。国際的なECサイトやモールへの出店、そして越境取引において、モバイル最適化されたウェブサイトやアプリの提供は、世界中の消費者にリーチし、エンゲージメントを高めるための鍵となります。モバイルコマースの概要とそのメリットを掘り下げることで、日本企業は越境ECを通じてグローバル市場での存在感を強化し、異なる文化や言語の壁を越えて消費者と直接つながることができるようになるでしょう。
モバイルコマースは、特に配送オプションや支払い方法など、顧客体験のカスタマイズを通じて、国際販売における顧客満足度を高める機会を提供します。また、モバイル端末の普及に伴い、越境EC事業者は、商品展示から決済プロセス、配送システムに至るまで、モバイルファーストのアプローチを採用することで、国際市場での売上増加を目指すことが可能となります。このような動向を踏まえ、本稿ではモバイルコマースの概要とそのメリット、そして越境ECにおけるその重要性について詳しく解説します。
2.モバイルコマースとは?
モバイルコマース、通称Mコマースは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを用いた電子商取引の一形態で、越境ECの世界では特に重要な役割を担っています。この形態の取引には、モバイル送金、電子チケットの購入、デジタルコンテンツのダウンロード、モバイルバンキング、非接触型決済、アプリ内購入、そしてモバイルマーケティングやデジタルクーポンの利用などが含まれます。これらは、消費者がグローバルなECサイトや国際的なモールから直接、または越境取引を通じて商品やサービスを購入する際に、便利でシームレスな体験を提供します。
モバイルコマースの展開は、電子商取引の枠を超え、新たなビジネスモデルやサービスの創出、既存ビジネスの成長促進に貢献しています。店舗を持たない越境EC事業者にとって、モバイルコマースは商品やサービスを国際的に展開し、異文化間での商取引を容易にするためのキーとなります。また、モバイル最適化されたECサイトやアプリを通じて、世界中の消費者にアクセスし、配送システムや支払いプロセスを効率化することで、グローバル市場での競争力を高めることができます。
3.モバイルコマースの種類
3−1.モバイルコマースの種類
モバイルコマース、特に越境ECの文脈では、多様な取引を可能にする幅広いアプリケーションがあります。これらは主にモバイルショッピング、モバイルバンキング、そしてモバイル決済の三つの主要カテゴリーに分けられます。
モバイルショッピングは、国際的なECサイトやモールでの販売を含め、スマートフォンやタブレットから容易にアクセスできるよう最適化されたショッピング体験を提供します。これには、モバイルフレンドリーなウェブサイトや専用のショッピングアプリ、さらにはソーシャルメディアを介した販売などが挙げられます。越境ECでは、これらのプラットフォームを活用して、国境を越えた消費者に商品やサービスを提供し、グローバルな市場への出店機会を拡大します。
モバイルバンキングは、オンラインバンキングサービスをモバイルデバイスで利用することを意味し、消費者は越境取引を行う際の支払いや資金管理を手軽に実施できます。特に越境ECでは、消費者が自国の通貨で安全かつ迅速に支払いを行えるよう、多様な通貨と決済オプションのサポートが重要となります。
モバイル決済は、越境ECでの取引をさらに促進します。顧客が選択できる支払い方法の幅広さは、購入プロセスの簡素化と迅速化を促し、コンバージョン率と売上の向上に直結します。非接触型決済やデジタルウォレット、さらには国際的な決済システムの統合は、国境を越えた取引における顧客の便利さと信頼性を高めるために不可欠です。
3−2.モバイル決済の種類
越境ECにおけるモバイルコマースでは、国際的な顧客が使用する多様な支払い方法を提供することが成功の鍵です。モバイル最適化されたECサイトやアプリは、グローバルな消費者にアクセスし、異文化間の取引を容易にするため、迅速かつ便利な決済方法を組み込む必要があります。これは、国際的なマーケットプレイスや特定の国・地域向けのECモールでの出店時に特に重要となります。越境ECでは、以下のような決済方法の提供が考えられます。
3−2−1.モバイルウォレット(別名:デジタルウォレット)
モバイルウォレットを使用すると、顧客はデビットカードやクレジットカードの詳細(番号や、名義人、有効期限など)、配送先住所、その他の支払いに付随する情報がモバイル端末に保存されます。そのため、顧客は購入のたびに面倒なカード情報や個人情報を再入力する必要がなく、代わりに、数回クリックするだけで迅速かつ便利にチェックアウトすることができます。
主要なモバイルウォレットとしては、以下のようなものがあります。
● Apple Pay
● Google Pay
● Amazon Pay
● PayPal
● Samsung Pay
3−2−2.非接触型モバイルペイメント
非接触型モバイルペイメントは、店舗での支払い体験をスムーズなものに変えてくれます。
顧客がすでにモバイルウォレット(例えば、Apply Pay、Google Pay、Samsung Payなど)に支払い情報を登録している場合、実店舗で支払いをする際にモバイルウォレットを利用することができます。クレジットカードやデビットカードをかざす、あるいは現金で支払うのではなく、店頭の端末にスマートフォンを近づけるだけで、決済の認証と送信を行うことができます。
3−2−3.クローズドループ型モバイルペイメント
クローズドループ型モバイルペイメントは、ユーザーが決済のたびにカード情報や個人情報を再入力するのではなく、一度だけ決済情報を入力するだけで良いという点は、モバイルウォレットと同じです。
ただし、クローズドループ型モバイルペイメントは、1つのブランドのモバイルアプリにのみリンクされています。つまり、顧客がブランド独自の支払い口座やギフトカードにお金をチャージし、残高を確認したり、お金を追加したり、オンラインや店舗で支払いを行ったりすることができます。
以下は、クローズドループ型モバイルペイメントの代表的な例です。
● Walmart Pay
● Starbucks
● Taco Bell
3−2−4.送金
モバイルバンキングのアプリで送金するのではなく、さまざまなプラットフォームを通じて、迅速かつ安全に送金することができるようになりました。例えば、以下のようなものが挙げられます。
● PayPal
● Google
● Venmo
● Cash App
● Facebook Pay
3−2−5.モバイルPOS(Point-of-sale)
モバイルPOSシステムとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルカードリーダーで、無線で取引を処理することでレジの役割を果たすシステムです。
モバイルカードリーダーは、モバイル端末さえあれば利用でき、どこでも持ち運び可能で比較的安価なため、小規模ビジネスにとっては最適な選択肢となり得ます。これらのシステムの中には、複数のEコマース・プラットフォームと統合できるものもあり、オンラインと実店舗の売上や在庫を自動的に同期させることができます。
モバイルPOSで人気のシステムには、以下のようなものが挙げられます。
● Clover
● Lightspeed
● Square
越境EC事業者は、これらの決済方法をシームレスに統合し、国際的な消費者が自国の通貨や好みの決済方法で容易に購入できるようにすることが重要です。また、安全な取引を保証し、消費者の信頼を獲得するために、最新のセキュリティ技術とフラウド防止策を導入する必要があります。これにより、越境EC事業者はグローバルマーケットでのコンバージョン率と顧客満足度を高めることができます。
4.モバイルコマースのメリット
越境ECにおけるモバイルコマースの展開は、国際市場でのビジネス拡張において大きなメリットを提供します。特に、越境ECでは、異なる国々の消費者にアクセスするために、モバイルフレンドリーなECサイトやアプリの開発が不可欠です。これにより、国際的な消費者に対して、いつでもどこからでもショッピングを楽しんでいただける体験を提供することが可能になります。
4−1.顧客体験の向上
越境ECにおけるモバイルコマースの導入は、グローバルな顧客に対してシームレスなショッピング体験を提供します。モバイル端末を通じて、様々な国や地域の消費者が自国の言語や通貨で商品を閲覧し、購入することができるようになり、国際的な顧客満足度を大幅に向上させることができます。
4−2.驚異的な成長性
越境EC市場におけるモバイルコマースの成長は、国際的な消費者のモバイル利用習慣の拡大に伴い、ますます加速しています。モバイルコマースを通じて、国際的なブランドや小売業者は、世界中の消費者にリーチし、新たな収益源を確保することができます。
4−3.真のオムニチャネル体験
越境ECにおけるオムニチャネル戦略の実施は、国際的な消費者がECサイト、ソーシャルメディア、マーケットプレイス、そしてモバイルアプリを含む複数のチャネルを通じて一貫したブランド体験を享受できるようにします。これは、ブランドのグローバルな認知度を高め、顧客ロイヤルティを強化する上で重要です。
4−4.多彩な支払い方法
越境ECでは、国際的な消費者が好む決済方法を提供することが極めて重要です。モバイルコマースにおいては、Apple Pay、Google Payなどのモバイル決済オプションの他に、AlipayやWeChat Payのような地域特有の決済方法を組み込むことで、アジア市場など特定の地域でのコンバージョン率を高めることができます。
これらのメリットを通じて、越境EC事業者はモバイルコマースを活用することで、国際的な市場での競争力を高め、グローバルな消費者基盤を拡大することが可能となります。
5.海外進出・海外展開への影響
越境ECにおいて、モバイルコマースの活用は、グローバルな消費者へのリーチを大幅に拡大し、異なる地域や文化の顧客ニーズに迅速に対応するための鍵となります。スマートフォンの普及により、国境を越えたオンラインショッピングがいっそう身近なものになっており、越境ECサイトは、モバイル最適化を施したウェブサイトやアプリを通じて、国際的な顧客体験の向上を図ることが重要です。
越境EC事業者は、モバイルコマースを通じて、各地域の消費者が好む支払い方法や言語、文化的な偏好に合わせたカスタマイズされたショッピング体験を提供することが可能になります。これにより、国際的なECサイトやモールへの出店、越境取引が促進され、グローバルなブランド認知と売上の向上を実現できます。
また、モバイルコマースの導入により、配送オプションやマーケティング戦略のカスタマイズなど、国際販売における顧客満足度を高める機会が広がります。例えば、位置情報サービスを活用した特定の地域向けのプロモーションの実施や、各国の祝日・文化的イベントに合わせた販促活動などを展開することで、地域ごとの消費者との関係を強化できます。
さらに、モバイルコマースを利用することで、越境EC事業者は配送システムの効率化、在庫管理の最適化、クロスボーダー取引の簡略化など、オペレーション面での改善も図ることができます。これにより、国際的な市場での競争力を高め、持続可能な成長を実現するための基盤を強化することができます。
モバイルコマースは、顧客にとってより良い選択肢を提供し、企業にとっては国際市場での成功を加速させる重要な戦略です。オムニチャネル戦略の一環として、越境ECにおけるモバイルコマースの積極的な活用が求められています。