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飲食・フード
2024.07.22

日本酒の海外展開|越境ECを活用したビジネス拡大のポイント

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1. はじめに:海外に日本酒の輸出を検討されている事業者様へ

越境ECを通じて日本酒を海外に輸出することは、グローバルな市場での新たな機会を開拓する上で魅力的な戦略となります。日本酒は、その独特な風味と酒蔵での製造過程における職人技により、世界中の多くの人々から高い人気を得ています。この記事では、海外に日本酒を輸出しようと考えている事業者様へ向けて、越境EC市場の現状と、日本酒の販売を成功させるための重要なポイントについて解説します。
現在、越境EC市場は急速に成長し続けています。特に食品・飲料セクターでは、消費者の嗜好の多様化と健康志向の高まりにより、独自の食文化に対する需要が増加しています。このような市場環境の中、日本食および日本酒はそのユニークな特性と文化的価値で、特に注目を集めています。
しかし、日本酒で越境ECビジネスを展開する道は容易なものではありません。なぜなら、海外市場において日本酒を販売するためには、各国のアルコールに関する法規制、税関手続き、さらには文化的な側面や消費者の好みを理解する必要があるためです。また、ビジネス成功のためには、越境ECプラットフォームを利用する際の戦略的アプローチや、効果的なマーケティング手法も求められます。
本記事では、越境ECを活用して海外のさまざまな国へ日本酒を輸出する際に注意すべき規制や、ビジネスを成功させるためのポイントを解説します。適切な準備と戦略を持って、日本酒の魅力を世界に広めましょう。

2. 全世界における越境ECの市場:食品・飲料に関する参入状況と活用可能性

越境EC市場は、グローバル規模で大きく成長しており、それは食品・飲料セクターにおいても同様です。しかし、日本の食品業界は、66兆円(2020年実績)という巨大な商取引市場規模を誇りながら、国内のEC化率は2022年時点でわずか4.16%と、デジタル化の進展が遅れている面があります。この低いEC化率は、消費者が鮮度を重視して物理的に商品を選びたい傾向、地元の店やコンビニの利便性、そしてネット事業者の配送料負担が重い点など、複数の要因によって引き起こされています。
しかしながら、このEC化の遅れは、逆に越境EC市場への参入という形でのビジネス拡大の大きな機会を秘めています。越境EC市場は2020年の時点で世界的規模で100兆円に達し、2014年からの6年間で約5倍の成長を遂げています。この成長は特に太平洋アジア地域で顕著で、新興市場としてのポテンシャルを示しています。
食品・飲料の越境ECに関しては、中国市場が特に注目に値します。中国では44%の消費者が越境ECサイトを通じて食品や飲料を購入した経験があると報告されています。この数字は、中国消費者の海外食品・飲料に対する強い関心と、巨大なEC市場規模を反映しています。中国をはじめとするアジア市場では、特に品質と安全性が保証された海外製品に対する需要が高く、日本産の食品や飲料、特に日本酒などの伝統的な商品にとって、絶好の輸出先となり得ます。
このように、日本の食品業界にとって、国内市場におけるEC化の遅れを越境ECへの参入によって補い、グローバルな市場でのビジネス拡大を目指すことは、現実的な戦略と言えるでしょう。越境ECを通じて、特にアジア市場における日本酒の存在感を高めることで、新たな消費層を獲得し、売上の増加を目指すことが可能です。この動向は、日本の食品業界全体にとって、未来への大きなチャンスとなります。

3. 日本酒の海外販売を検討する際に確認すべきポイント

3-1. 法的要件と免許取得

越境ECを通じて日本酒を海外に販売する際には、適切な「免許」の取得と「規制」の確認が欠かせません。まず、一般的には酒類の輸出には「輸出酒類卸売業免許」が必要です。これは、相手国の卸売業者や小売店に安全かつ合法的に酒類を販売するための基本的な条件です。さらに、越境ECを通じて、直接海外の消費者に向けて日本酒を販売する場合は、「通信販売酒類小売業免許」の取得が必要です。この「通信販売酒類小売業免許」は国内販売を前提としたものですが、海外のレストランや一般消費者に直接販売するためには「一般酒類小売業免許」の取得も必要となる場合があります。税務署によっても判断が異なるため、正確な情報については各税務署で個別に確認する必要があります。海外の取引先によっては「輸出酒類卸売業免許」がないと取引に応じてくれないところもあるようなので、事前の確認が重要です。
これらの免許を取得する過程では、企業は自社の事業モデルが日本国内および海外の法律や規制に適合していることを保証する必要があり、適切な手続きを踏むことで、国際的なビジネスの信頼性と合法性を担保できるでしょう。

3-2. 各国市場へのカスタマイズ販売法

お酒を越境ECで海外に販売する際は、目的地となる国それぞれの法律や規制に細心の注意を払う必要があります。各国は、お酒の輸入に対して独自の規制を設けており、これには税関手続き、年齢制限、ラベル表示要件などが含まれます。例えば、アメリカでは州によって酒類の販売に関する法律が異なるため、特定の州への販売前にはその州の規制を熟知しておく必要があります。また、EU諸国では、食品安全に関する厳格な基準(たとえば、食品表示規則、容器・容量規制、添加物・残留農薬に関する規制など)が設けられており、日本酒がこれらの基準に適合していることを証明する必要があります。このような多様な規制環境を理解し、遵守することは、海外市場での成功を左右する重要な要素です。企業は、自社の対象とする市場での法律や規制に関する詳細なリサーチを行い、必要に応じて現地の専門家と協力することで、合法的かつ効果的な販売戦略を構築することが求められます。

3-3. 品質保証と効率的物流

日本酒の越境EC販売において、注意すべき3つめのポイントは、製品の品質維持と物流の最適化です。日本酒はその風味や品質が温度や光によって影響を受けやすいため、国際輸送中も品質を維持することが極めて重要となります。品質の劣化は、ブランドイメージの損失に直結するため、輸送方法や包装材料の選定を行う際には特に注意を払う必要があります。
物流プロセスにおいては、迅速かつ効率的な配送システムの構築が求められます。これには、適切な温度管理が可能な物流パートナーの選定や、配送経路の最適化、関税手続きや配送トラッキングシステムの整備などが含まれます。特に、長距離の輸送や複雑な配送ネットワークを介する場合、製品が消費者に届けられるまでの時間とコストを最小限に抑えるために、物流プロセスの詳細な計画が不可欠となります。
品質維持においては、製品の保管条件にも注意を払う必要があります。これは、生産地での保管から輸出先での最終消費者への配送まで、一貫した品質管理体制の確立を意味し、消費者に安心して製品を提供することを可能とします。品質管理のための具体的なアクションとしては、温度や湿度がコントロールされた環境での保管、製品の鮮度や品質を保証するための包装材料の選択、そして製品が最適な状態で消費者に届くようにするための適時配送が挙げられます。
このように、日本酒の海外販売を成功させるためには、免許と規制の確認、販売方法の検討に加え、製品の品質維持と物流の最適化にも注意を払う必要があります。これらのポイントを総合的に管理し、改善していくことで、消費者に最適なサービスを提供でき、越境ECを通じた日本酒販売の成功率を高めることができるでしょう。

4. 越境ECにおける日本酒販売を成功させる秘訣

4-1. デジタルマーケティングの活用

越境ECにおける日本酒販売を成功させる最初の秘訣は、効果的なデジタルマーケティングの活用といえます。世界中の消費者にリーチするために、無料のソーシャルメディア(Instagram、Facebook、TikTokなど)の活用、検索エンジン最適化(SEO)、コンテンツマーケティングなどのデジタルマーケティングツールを駆使することが重要となります。特に、日本酒の独特な魅力を伝えるためのストーリーテリングとブランディングは、消費者の関心を引きつけるための鍵となります。製造過程の紹介、使用される原材料の特徴、醸造家の哲学や情熱など、日本酒の各銘柄にまつわる背景情報を共有することで、商品に深みと文化的価値を加え、消費者の興味を惹きつけることができます。また、インフルエンサーとのコラボレーションやユーザー生成コンテンツの投稿・活用も、ブランド認知度の向上とエンゲージメントの促進に有効です。

4-2. カスタマーエクスペリエンスの向上

次に、カスタマーエクスペリエンスの向上も、越境ECにおける日本酒販売の成功には不可欠な要素となります。具体的には、使いやすいウェブサイトの設計、複数言語でのサポート、効率的な注文処理システムなど、顧客がスムーズに購入プロセスを進められるようなオンライン環境の導入が考えられます。特に、国際的な顧客を対象とする場合、日本語だけでなく、多言語や通貨(決済)の違いに対応したユーザーインターフェースの提供が重要になります。また、個々の顧客の好みや購入履歴に基づいたパーソナライズされた商品推薦やプロモーションの提供も、顧客満足度の向上に貢献するでしょう。その他、迅速かつ信頼性の高い配送オプションや、透明でアクセスしやすいカスタマーサービスなど、顧客の信頼を獲得し、リピート購入へとつなげるための工夫も欠かせません。

4-3. 品質管理と適切な物流パートナーの選定

最後に、商品の品質管理と適切な物流パートナーの選定も、海外販売を成功させるために忘れてはならない要素となります。日本酒は保存条件に敏感な商品であり、品質を維持するためには適切な温度管理や保管措置が必要となります。そのため、製品が目的地に到着するまでの品質を保証できる物流パートナーの選定が不可欠となります。この選定プロセスには、配送ネットワークの広さ、配送速度、コスト、温度管理能力など、複数の要因を考慮する必要があります。また、関税や輸入規制などの国際貿易に関わる手続きの専門知識も持っていなければならないでしょう。信頼できる物流パートナーとの協力により、効率的かつコスト効果的な配送ソリューションを実現し、世界中の顧客に対して高品質な日本酒を提供することが可能になります。

5. 海外進出・海外展開における影響

越境ECを通じた日本酒の海外販売は、日本文化の魅力を世界に広める重要な手段となり、海外進出・海外展開の新たな機会を創出することができます。このアプローチにより、ブランドの国際的な認知度も高まり、日本酒という製品を通じて日本の伝統や文化を伝えることにもつながるでしょう。さらに、グローバルマーケットでの競争力を高めることで、事業の成長機会を大幅に拡大することができます。海外市場への効果的な進出は、国内市場に依存しない収益源の確保にもつながり、事業の持続可能性を高める効果をもたらします。越境ECを活用した海外展開は、日本酒業界全体の活性化と、日本文化の国際的な評価の向上に貢献する可能性を秘めています。

WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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