海外進出・展開を目指す日本企業をサポートする 越境ECメディア

  • Facebook
  • LinkedIn
  • Line
  • Twitter

越境ECで海外進出・海外展開を目指す企業をサポートする 越境ECメディア

飲食・フード
2024.09.12

【弁護士解説】越境ECで食品販売を成功させるには?市場規模・メリットと絶対知るべき各国の法規制・注意点

  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • X

食品メーカーやEC事業者、海外営業部門など、海外進出を検討している企業のご担当者様は、食品の越境ECについて次のようなお悩みや疑問をお持ちではないでしょうか。

食品の越境ECにはどのようなビジネスチャンスがありますか?

日本食への世界的な関心の高まりや、日本製食品の品質・安全性への評価などを背景として、日本の「食」の海外市場は拡大しています。越境ECを活用すれば、海外に実店舗を設けることなく、世界各国の消費者へ日本の食品を販売することが可能です。国内市場だけに依存しない新たな販路を構築できることから、食品メーカーや地域の事業者にとっても有力な海外展開の手段となっています。

越境ECでは、どのような日本の食品・飲料が海外で人気なのでしょうか?

緑茶や抹茶、菓子、調味料、常温保存可能な加工食品など、日本らしさを感じられる商品は海外消費者から注目されています。特に、賞味期限が比較的長く、軽量で輸送しやすい商品は越境ECとの相性が良いといえます。また、日本限定・地域限定の商品や、産地・製法などのストーリーを持つ食品は、日本文化そのものを付加価値として訴求することも可能です。

食品の越境ECは低リスクで始めることができますか?

海外に実店舗や大規模な販売拠点を設ける方法と比較すると、越境ECは初期投資を抑えながら海外市場へ参入しやすいというメリットがあります。まず特定の商品や市場で販売を開始し、売上や顧客レビューなどを分析しながら本格的な海外展開を判断する「テストマーケティング」として活用することも可能です。ただし、小規模な販売であっても、販売先の食品関連法規への対応が不要になるわけではありません。

食品を海外で販売する際には、どのような法規制に注意する必要がありますか?

食品に使用できる添加物や成分、輸入手続き、アレルゲン・栄養成分表示などのルールは国・地域によって異なります。例えばアメリカでは、一定の場合にFDA(食品医薬品局)への食品施設登録や輸入時の事前通知(PN)が必要です。また、健康食品やサプリメントでは、商品ページや広告における健康効果の表現によって医薬品として規制されるリスクにも注意しなければなりません。

食中毒やアレルギー事故などが発生した場合には、どのような備えが必要ですか?

食品事故が発生すると、消費者への損害賠償だけでなく、商品の回収(リコール)や行政当局への対応、販売停止などが必要となる可能性があります。そのため、販売開始前からトレーサビリティやリコール体制を整備し、物流事業者・販売代理店などとの責任分担を契約で明確にしておくことが重要です。

本記事では、越境ECにおける食品販売の市場動向や人気商品、実施事例、海外展開のメリットを整理したうえで、食品添加物・禁止成分、FDAへの施設登録・事前通知、食品表示、健康食品・サプリメントの広告規制、食品事故への法的な備えなど、食品の越境ECで押さえておくべきポイントについて、越境EC専門の企業弁護士の視点から解説します。

1. はじめに

K海外営業部長
K海外営業部長

日本の食品は海外でも人気がありますし、越境ECを活用すれば、現地に店舗を構えなくても海外の消費者に直接販売できますよね。食品メーカーにとっても大きなチャンスになりそうです。

そうですね。ただし、食品は一般的な雑貨などとは異なり、人の健康や安全に直接関わる商品です。そのため、販売先の国によって食品添加物や原材料、アレルゲン表示、栄養成分表示などについて細かな規制が設けられています。『日本で問題なく販売できている商品だから海外でも販売できる』とは限らない点には、特に注意が必要です。

小野弁護士
小野弁護士
 

近年、インターネットや国際物流の発達により、海外に実店舗や販売拠点を設けることなく、ECサイトや海外のECモールを通じて商品を販売する「越境EC」が身近な海外進出手段となっています。なかでも食品分野は、日本独自の食文化への関心や日本製品の品質に対する信頼などを背景として、日本企業にとって海外市場を開拓する有力な選択肢の一つです。

菓子や調味料、緑茶、加工食品、健康食品・サプリメントなど、日本ならではの商品を海外の消費者へ直接届けることができれば、新たな顧客層の獲得やブランド認知度の向上につながります。また、海外に実店舗を開設する場合と比べて初期投資を抑えやすく、まずは特定の商品や国に絞って市場の反応を確認する「テストマーケティング」として活用できることも越境ECの大きな魅力です。

一方、食品の越境ECでは、マーケティングや物流だけでなく、販売先となる国・地域の法規制を正確に把握することが欠かせません。日本で使用が認められている食品添加物や成分が海外では禁止・制限されている場合もあります。さらに、アメリカ向けに食品を販売する場合にはFDA(米国食品医薬品局)に関する手続きが問題となるほか、アレルゲンや栄養成分の表示、健康食品・サプリメントの広告表現などについても現地のルールを確認する必要があります。

対応を誤れば、通関で商品が止まるだけでなく、販売停止や商品の回収、行政上の措置につながる可能性もあります。さらに、食中毒やアレルギーなどの食品事故が発生すれば、消費者への損害賠償やブランドの信用低下など、企業経営に大きな影響を与えるおそれもあります。

越境ECは、日本の食品の魅力を世界へ届け、新たな市場を開拓する有効な手段です。一方で、食品特有の規制や安全面のリスクもあるため、海外市場の可能性と注意点の双方を理解したうえで事業を進める必要があります。

 

2. 越境ECにおける食品販売の全体像

K海外営業部長
K海外営業部長

食品の越境ECに関心を持つ企業は増えていますが、実際に日本の食品は海外でどのくらい需要があるのでしょうか。また、どのような商品が売れやすいのかも気になります。

日本の食品・飲料は、品質や安全性への信頼に加え、日本食そのものへの世界的な関心を背景に、海外市場で存在感を高めています。ただし、食品であれば何でも越境ECに向いているわけではありません。市場規模だけでなく、海外で人気のある商品カテゴリーや実際の成功事例を確認し、自社商品との相性を見極めなければなりません。

小野弁護士
小野弁護士
 

本項目では、日本の「食」を取り巻く海外市場の動向を確認したうえで、越境ECで海外消費者から人気を集めている日本の食品・飲料の特徴を整理します。さらに、実際に越境ECを活用して海外市場を開拓している企業の事例を取り上げ、食品の越境ECビジネスを成功させるためのヒントを紹介します。

2-1. 拡大を続ける日本の「食」の海外市場規模

越境ECを活用した食品販売を検討するうえでは、まず日本の農林水産物・食品に対する海外需要がどのように変化しているのかを把握する必要があります。近年、日本食への世界的な関心の高まりや健康志向の拡大、訪日外国人による日本食の認知度向上などを背景として、日本の「食」の海外市場は着実に拡大しています。
農林水産省が2026年2月に公表した「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円となり、前年比12.8%増加しました。輸出額は13年連続で過去最高を更新しており、日本の食品や農林水産物に対する海外需要が中長期的に拡大していることが分かります。

輸出先をみると、2025年は米国が2,762億円で最大となり、香港が2,228億円、台湾が1,812億円、中国が1,799億円と続いています。特定の国・地域だけではなく、複数の主要市場で日本の「食」が受け入れられていることも特徴です。

また、品目分類別では、2025年の加工食品の輸出額が5,725億円と最も大きく、前年比7.2%増となりました。農林水産省によれば、牛肉、米、緑茶なども過去最高を更新しています。こうした動向は、加工食品をはじめとする日本の食品を海外へ販売したい企業にとって追い風といえるでしょう。

輸出拡大の背景について、農林水産省は、日本食への関心の高まりに加え、インバウンドによる日本食の認知度向上や健康志向の高まりなどを挙げています。日本を訪れた外国人が現地で食べた商品を帰国後にも購入したいと考えるケースもあり、オンライン販売はこうした継続需要を取り込む手段の一つとなります。

なお、これらの数値は越境ECだけではなく、業務用取引などを含む農林水産物・食品の輸出全体の実績である点には注意が必要です。一方で、海外における日本食品市場そのものが拡大していることは、越境ECに取り組む日本企業にとっても重要な市場環境の変化といえます。

2-2. 越境ECで海外から人気の高い日本の食品・飲料

越境ECにおける食品販売では、日本ならではの味や品質を持つ食品・飲料が海外消費者から注目されています。特に、緑茶や菓子、調味料、加工食品などは海外でも認知度が高く、保存性や輸送のしやすさという点でも越境ECと相性の良い商品といえます。

軽量で体積が小さい食品は、国際輸送のコストを抑えやすいため、越境ECで取り扱いやすい傾向があります。例えば、緑茶や抹茶などの日本茶は比較的軽量で保存しやすく、日本の食文化や健康志向と結び付けて訴求しやすい商品です。農林水産省の2025年の輸出実績でも、緑茶の輸出額は過去最高を記録しており、海外需要の高まりがうかがえます。

また、菓子や常温保存可能な加工食品も越境ECに適しています。スナック菓子や米菓などは、日本独自の味やパッケージ、豊富な商品展開などを強みに海外消費者へアピールできます。賞味期限が比較的長い商品であれば、国際配送に一定の日数を要する場合にも対応しやすいというメリットがあります。
さらに、味噌、醤油、だしなどの調味料も、日本食の世界的な普及を背景として海外販売を検討しやすいカテゴリーです。現地では入手しにくい本格的な日本の味を家庭で楽しみたいという需要に応えられるほか、一度商品を気に入ってもらえれば継続購入につながる可能性もあります。

このほか、海外では日本産の米や牛肉、日本酒などにも需要があります。ただし、重量のある商品や冷蔵・冷凍管理が必要な商品、酒類などは、物流コストや輸入規制、免許・税制などの面で越境ECのハードルが高くなる場合があります。

このように、海外で人気があることだけでなく、賞味期限、重量・サイズ、保存温度、配送コストなどを総合的に検討することが、越境ECで販売する商品を選定する際のポイントです。また、食品は販売先によって原材料や食品添加物、表示などの規制が異なるため、「海外で人気がある=そのまま販売できる」わけではない点にも注意が必要です。

2-3. 食品の越境ECビジネス成功・実施事例

食品の越境ECでは、単に日本の商品を海外へ発送するだけでなく、「日本でしか体験できない価値」を商品とともに提供することで海外の消費者を獲得している事例があります。特に、日本限定の商品や季節性、地域性などを活かした販売方法は、日本食品の差別化につながります。

代表的な事例の一つが、日本のお菓子を海外へ届けるサブスクリプションサービスです。例えば「TokyoTreat」では、日本限定・季節限定のお菓子やキャンディー、インスタント麺、飲料などを組み合わせたボックスを定期的に海外へ配送しています。単品の商品を販売するのではなく、「日本のお菓子文化を体験する」という付加価値を提供していることが特徴です。TokyoTreatでは世界向けの配送にも対応しており、商品の説明やアレルゲン情報なども提供しています。

また、抹茶や桜といった「日本らしさ」を感じさせるフレーバーや、日本限定・季節限定の商品も、海外の消費者へ日本文化を訴求する材料となります。日本を訪れなければ購入しにくい商品をオンラインで購入できることは、越境ECならではの価値といえるでしょう。

食品そのものだけでなく、地域の文化や生産背景を伝えることも重要なポイントです。地方の菓子や調味料、茶などについて、生産地や原材料、伝統的な製法、生産者のストーリーなどを商品ページやSNSで発信すれば、海外の消費者に商品の付加価値を伝えやすくなります。価格だけではなく「なぜこの商品を選ぶのか」という理由を作ることが、海外市場での差別化につながります。

食品の越境ECでは「日本製」というだけではなく、限定性、文化的背景、商品のストーリー、定期購入などを組み合わせ、海外消費者に独自の購入体験を提供することが重要だという点です。一方で、海外で人気が見込める商品であっても、販売先の食品規制を満たしていなければ販売することはできません。ビジネスモデルやマーケティング戦略と同時に、原材料・食品添加物・ラベル表示などの法規制を確認したうえで展開していきましょう。

3. 越境ECにて食品販売を行うことのメリット

K海外営業部長
K海外営業部長

日本の食品に対する海外需要が伸びているのであれば、越境ECは新しい販路としてかなり期待できそうですね。食品メーカーにとって、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

大きなメリットは、国内市場だけに依存せず、海外の新たな顧客を獲得できることです。特に食品分野では、日本製品の品質や安全性、日本独自の食文化そのものを強みにできる可能性があります。また、いきなり海外に店舗や大規模な拠点を設けるのではなく、越境ECで現地の反応を確認してから本格展開を検討できる点も、日本企業にとって大きな魅力です。

小野弁護士
小野弁護士
 

本項目では、食品販売に越境ECを活用するメリットについて、国内の人口減少を補うグローバルな市場拡大、「Made in Japan」の品質を活かしたブランド認知度の向上、テストマーケティングとしての低リスクな海外展開という3つの観点から解説します。

3-1. 国内の人口減少を補うグローバルな市場拡大

越境ECを活用することで、企業は地理的な制約を超えて商品を販売し、世界各国の消費者へ直接アプローチすることが可能になります。特に、少子高齢化や人口減少が進む日本では、国内市場だけに依存せず、海外需要を取り込むことが中長期的な成長戦略の一つとなっています。

食品分野では、日本食の世界的な普及や訪日外国人の増加などを背景として、日本の「食」に対する海外消費者の関心が高まっています。前述したとおり、日本の農林水産物・食品の輸出額も拡大を続けており、海外市場は日本企業にとって新たな販売機会を生み出しています。

特に、抹茶や緑茶、菓子、調味料、加工食品など、日本独自の食文化や地域性を感じられる商品は、国内とは異なる顧客層を獲得できる可能性があります。複数の国・地域に販路を広げることができれば、国内需要の変動に対するリスクを分散し、売上基盤の多様化や事業の安定化にもつながるでしょう。

3-2. 「Made in Japan」の品質によるブランド認知度向上

越境ECは、日本食品の品質や文化的な価値を海外へ直接発信し、ブランド認知度を高めるための有効な手段でもあります。日本の食品は、品質管理へのこだわりや丁寧な製造工程、独自の味や美しいパッケージなど、さまざまな要素を強みとして海外市場へ訴求できます。

オンライン販売では、商品そのものだけでなく、原材料へのこだわり、産地、伝統的な製法、生産者の思いといった背景まで商品ページやSNSを通じて伝えることができます。例えば、地域に根付いた調味料や茶、菓子などの場合、その土地の歴史や食文化を紹介することで、単純な価格比較では伝わりにくい商品の付加価値を海外消費者に訴求することが可能です。

さらに、SNSや動画、インフルエンサーマーケティングなどを組み合わせれば、海外消費者との接点を増やし、「Made in Japan」の品質や日本らしさを継続的に発信できます。越境ECを単なる販売チャネルとしてではなく、海外におけるブランド構築の場として活用することで、中長期的な認知度向上やリピーターの獲得につなげることができるでしょう。

3-3. テストマーケティングとしての低リスクな海外展開

海外に実店舗や大規模な販売拠点を設ける従来型の海外進出と比較すると、越境ECは初期投資を抑えながら海外市場へ参入しやすい点が大きなメリットです。最初から大規模な設備投資や大量の在庫を用意するのではなく、特定の商品や国・地域に絞って販売を開始し、消費者の反応を確認しながら段階的に事業を拡大できます。

食品の場合、国によって好まれる味や容量、価格帯、パッケージなどが異なります。そのため、越境ECをテストマーケティングとして活用し、実際の売上データやアクセス数、リピート率、顧客レビューなどを分析することで、どの商品がどの市場に適しているのかを具体的に把握できます。得られたデータは、商品改良や価格設定、広告戦略だけでなく、将来的な現地流通や本格的な海外進出を判断する材料にもなります。

ただし、少量のテスト販売であっても、販売先の食品規制が免除されるとは限りません。原材料や食品添加物、輸入手続き、ラベル表示などについては、販売開始前から対象国の法規制を確認する必要があります。「低コスト・低リスクで始めやすいこと」と「法的な準備が不要であること」は別の問題として捉える必要があります。

4. 【弁護士が解説】越境ECで食品販売を行ううえでの致命的な法的注意点

K海外営業部長
K海外営業部長

越境ECなら比較的手軽に海外販売を始められそうですが、食品の場合、日本で普通に販売している商品をそのまま海外向けに販売しても問題ないのでしょうか?

そこは特に注意が必要です。日本で適法に販売されている食品でも、海外では使用できない添加物や成分が含まれていたり、現地の表示基準を満たしていなかったりすることがあります。さらに、アメリカではFDAへの施設登録や食品輸入時の事前通知が必要となる場合がありますし、アレルゲン表示や健康食品の広告表現にも厳しいルールがあります。販売後に問題が発覚すると、商品の輸入拒否や販売停止などにつながる可能性もあるため、販売を開始する前の法規制確認が成功を左右します。

小野弁護士
小野弁護士
 

    食品の越境ECでは、商品の魅力や物流、マーケティングだけでなく、販売先となる国・地域の食品関連法規を遵守することが不可欠です。日本と海外では、使用できる食品添加物や成分、輸入時に必要となる手続き、パッケージへの表示事項、健康効果に関する広告表現などのルールが異なります。

    本項目では、食品の越境ECを行う日本企業が特に注意したい法的リスクについて、食品添加物・禁止成分の違い、アメリカFDAの施設登録と事前通知(PN)、アレルゲン・栄養成分表示、健康食品・サプリメントの広告表現と医薬品該当性という4つの観点から解説します。

    4-1. 日本と海外の「食品添加物・禁止成分」のルールの違い

    食品に使用できる添加物や成分のルールは、国・地域によって異なります。そのため、日本国内で適法に製造・販売されている食品であっても、そのまま海外で販売できるとは限りません。例えばEUでは、食品添加物について使用できる物質や対象食品、使用条件などがEU法によって定められており、日本とは異なる基準で確認する必要があります。

    特に越境ECでは、日本で販売している商品のパッケージを翻訳するだけで海外販売を開始してしまうケースに注意が必要です。販売先で認められていない成分が含まれていれば、輸入時の差止めや商品の回収、販売停止などにつながる可能性があります。海外向けの商品を選定する段階で、原材料や添加物を一つずつ確認し、対象国の最新規制と照合します。

    4-2. アメリカFDA(食品医薬品局)の施設登録と事前通知(PN)の義務

    アメリカ向けに食品を販売する場合、FDA(米国食品医薬品局)の規制への対応に細心の注意を払います。原則として、米国で消費される食品を製造・加工・包装・保管する国内外の施設には、一定の例外を除きFDAへの食品施設登録が求められます。また、輸入食品については、米国へ到着する前にFDAへPrior Notice(事前通知・PN)を提出する必要があります。

    これらは、AmazonなどのECモールを利用して販売する場合でも無関係ではありません。必要な登録や事前通知が適切に行われていない場合、輸入時に問題となり、商品が留め置かれる可能性があります。なお、すべての食品・施設に一律の要件が課されるわけではなく、例外もあるため、自社商品の製造・保管・輸送形態を確認したうえで、必要な手続きを判断しましょう。

    4-3. 命に関わる「アレルゲン表示」と「栄養成分表示」の厳格なパッケージ・ラベル規制

    食品のパッケージやラベルは、単なる商品説明ではなく、消費者の安全を守る重要な情報です。特にアレルゲンは重大な健康被害につながる可能性があるため、販売先の表示ルールを正確に確認しなければなりません。例えばアメリカでは、乳、卵、魚、甲殻類、木の実、小麦、落花生、大豆に加え、2023年からごま(sesame)が加わり、9品目が主要アレルゲンとして扱われています。

    また、米国向け食品では、適用される場合、Nutrition Facts(栄養成分表示)をはじめとするFDAの食品表示規則にも対応する必要があります。日本国内向けのラベルを単純に英訳すればよいわけではありません。原材料名、アレルゲン、栄養成分などについて販売先の基準を確認し、商品を出荷する前に現地法に適合した表示へ変更することが重要です。

    4-4. 健康食品・サプリメント販売における広告表現の罠|現地での医薬品該当性リスク

    健康食品やサプリメントの越境ECでは、商品そのものだけでなく、商品ページや広告でどのような効果をうたうかにも注意が必要です。例えばアメリカでは、ダイエタリーサプリメントについて一定のstructure/function claim(身体の構造・機能に関する表示)は認められていますが、疾病の診断、治療、治癒または予防を目的とするような表示を行えば、医薬品として規制対象となる可能性があります。

    そのため、日本国内で使用している「○○を予防する」「○○を治す」といった疾病に関係する表現を、そのまま翻訳して海外向けECサイトやSNS広告に掲載することは危険です。また、米国ではstructure/function claimについて、一定の場合にFDAへの通知や所定の免責表示も必要となります。商品ラベルだけでなく、ECサイトや広告を含めた販売表現全体を現地規制に照らして確認します。

    5. 海外進出における影響と食品事故(食中毒等)に備える法的防衛策

    K海外営業部長
    K海外営業部長

    食品の越境ECは海外市場を開拓する大きなチャンスですが、もし販売した商品によって食中毒やアレルギー事故が起きた場合、日本企業にも責任が及ぶのでしょうか?

    その可能性はあります。食品事故が発生すると、損害賠償だけでなく、商品の回収や販売停止、行政当局への対応などが必要になる場合があります。さらに、海外では日本と異なる製造物責任や消費者保護のルールが適用されることもあります。事故を完全に防ぐことは難しいからこそ、販売前の法規制確認に加えて、トレーサビリティやリコール体制、契約関係などをあらかじめ整備しておくことが重要です。

    小野弁護士
    小野弁護士
     

      食品の越境ECは、国内の人口減少を背景に新たな市場を開拓し、「Made in Japan」の品質や日本独自の食文化を世界へ発信できる有力な海外進出手段です。実店舗を構える場合と比較して小規模から市場を検証しやすく、海外消費者の反応を確認しながら段階的に事業を拡大できる点も大きなメリットです。

      一方、食品は消費者の生命・健康に直接関係する商品であるため、一般的な越境EC以上に慎重なリスク管理が求められます。食品添加物や禁止成分、FDAをはじめとする現地当局への登録・届出、アレルゲン・栄養成分表示、健康食品の広告表現など、販売先によって適用されるルールは大きく異なります。日本で問題なく販売できる商品であっても、そのまま海外で適法に販売できるとは限りません。

      さらに、食中毒や異物混入、表示ミス、未表示のアレルゲンなどの食品事故が発生した場合には、消費者への損害賠償に加え、商品の回収(リコール)、行政当局への報告、ECプラットフォームへの対応などが必要となる可能性があります。海外で大規模な問題へ発展すれば、現地で築いたブランドの信用だけでなく、企業全体の海外展開にも影響を及ぼしかねません。

      こうしたリスクに備えるためには、販売開始前に対象国の食品関連法規を確認するだけでなく、製造・流通履歴を追跡できるトレーサビリティ体制、事故発生時の報告・リコール手順、海外の販売代理店や物流事業者との責任分担を定めた契約、適切な保険の検討など、問題が起きた場合を想定した法的・実務的な防衛策を整えておくことが不可欠です。

      越境ECによる食品販売を成功させるためには、「売れる商品を海外へ届ける」という視点だけでは十分ではありません。市場性と法規制の双方を確認し、販売開始から事故発生時までを見据えた体制を構築することが、持続的な海外展開につながります。特に複数国への販売や健康食品・サプリメントなど規制の複雑な商品を扱う場合には、早い段階から海外法務に詳しい弁護士などの専門家と連携し、リスクを整理したうえで事業を進めるとよいでしょう。

      6.弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所が提供するサポート

      弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所では、多くの企業様へのご支援を通じて、食品の越境ECや海外販売に関するさまざまな法務課題を解決してきた実績があります。

      • 食品の越境ECを開始するにあたっての法的リスクの整理
      • 販売先の国・地域における食品添加物や禁止成分などの規制確認・調査
      • アメリカ向け食品販売におけるFDAの施設登録や事前通知(PN)などの対応方針の検討
      • アレルゲン表示、栄養成分表示、原材料表示など、現地のパッケージ・ラベル規制への対応
      • 健康食品・サプリメントの商品表示や広告表現に関する法的リスクの確認
      • 食中毒や異物混入、アレルギー事故などが発生した場合のリコールや初動対応、取引先との責任関係の整理

      といった内容について、現在の事業計画やお困りの点を簡潔に共有いただければ、販売する食品の種類、対象国、販売方法、利用するECプラットフォームなどを踏まえ、必要となる法規制対応やリスク管理の方向性をまとめてご案内いたします。また、海外販売に必要な対応を明確化することで、想定外のトラブルや追加費用の発生を防ぐことにもつながります。

      当事務所では、問題解決に向けてスピード感を重視する企業の皆さまにご対応させていただきたく、「メールでスピード相談」をご提供しています。
      初回の相談は無料です。24時間、全国対応で受付しています。
      問題解決の第一歩としてお問い合わせ下さい。

      ※本稿の記載内容は、執筆時点の法令・情報等に基づいています。
      本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。

      WRITER
      弁護士 小野 智博
      弁護士 小野 智博
      弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
      ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
      また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
      著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
      • Facebook
      • LinkedIn
      • LINE
      • X
      越境ECメディアは、
      越境ECで海外進出・海外展開を
      目指す企業に向けた最新の情報を、
      越境ECを専門とする弁護士が解説する
      メディアサイトです。

      【運営者】
      弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
      代表弁護士 小野智博(東京弁護士会所属)
      • Facebook
      • LinkedIn
      • LINE
      • X

      海外進出・展開を目指す日本企業をサポートする
      タンデムスプリントグループの
      メルマガ

      EC・越境ECの法律情報や最新情報をお届け。
      無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

      海外進出・海外展開の法律情報や最新情報をお届け。
      無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

      ページトップへ戻る