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越境EC参入事例
2024.09.12

インバウンド需要の回復による越境 EC 事業への影響とは?日本商品の購買意欲が高まるなかでとるべき戦略

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1. インバウンド需要回復に伴う業界動向

世界中でインバウンド需要が回復し始めている今、日本企業にとって海外市場への進出が一層重要になっています。特に、越境ECは、国境を越えた商取引を促進し、新たな顧客層を開拓する大きなチャンスを提供します。本記事では、インバウンド需要の回復がもたらす影響と、効果的な越境EC戦略について掘り下げていきます。

1-1. 訪日外国人観光客数の推移

2019年、訪日外国人の旅行消費額は約4兆8,000億円に達し、日本経済にとって重要な収入源となっていました。しかし、コロナ禍の影響で、2020年と2021年は訪日外国人数が激減。2019年の260万人超から、2022年にはわずか1万6,719人にまで減少し、99.4%の大幅な減少を記録しました。
2022年10月には水際対策の緩和が実施され、その結果、訪日外国人数は徐々に回復を始めました。緩和直後の10月には約50万人を記録し、前月比で約241%増という大幅な伸びを見せました。その後も増加傾向が続き、11月には約93万人、12月には約137万人と、前月比でそれぞれ約187%、146%の増加を記録。2023年1月には約150万人に達し、前月比約109%の増加率で、着実な回復が確認されています。
この回復傾向は、訪日外国人市場に対する企業の越境EC戦略にとって、大きなチャンスとなります。訪日経験が日本商品への関心を高め、帰国後も日本の商品を購入する需要が増えることが予想されるため、この機会を生かすために、マーケティング戦略を適切に調整することが重要となります。

1-2. コロナ明けによる変化

2022年6月10日、日本政府はコロナ禍で一時停止していた外国人観光客の受け入れを再開しました。これに伴い、段階的な規制の緩和が進められ、訪日外国人観光が再び活性化し始めています。特に、円安の影響もあり、訪日観光がさらに魅力的な選択肢となり、日本国内での消費が増加しています。
この状況は、インバウンド需要の拡大と直結し、越境ECサイトの重要性が高まっています。ECサイトは、単に商品をデジタルで販売するだけでなく、様々な情報をまとめて発信するプラットフォームとしての役割も果たしています。その結果、訪日前の外国人にとって、日本製品をどこで買い物をするかの情報源として利用されることが多く、訪日時の実店舗訪問や帰国後のリピート購入につながることが期待されています。
このように、コロナ明けの変化は、越境ECを含む多くのビジネスチャンスを創出しており、戦略的なアプローチが求められています。企業は、これらの機会を活かし、新たな顧客層の開拓と持続的なビジネス成長のために、適切な戦略を展開する必要があります。

2. インバウンド需要回復による企業のメリット

2-1. 新規顧客の開拓

インバウンド需要の回復は、日本企業にとって新規顧客を開拓する絶好の機会を提供します。訪日外国人が増加することで、日本の商品やサービスに対する直接的な接触機会が増え、これが新たな顧客層の獲得に直結します。特に、エンターテインメントやファッションなど、日本が世界に誇る独自の文化コンテンツは大きな魅力です。
円安の影響もあり、日本製品は価格競争力を持ち、より多くの外国人観光客を引きつけています。このような状況は、訪日外国人向けのマーケティング活動において、特にデジタルマーケティングの活用が重要になります。越境ECサイトを通じて、訪日前に商品情報やプロモーションを提供することで、来日時の購買意欲を高めることが可能です。
また、多言語に対応したウェブサイトや、文化的な違いを理解したカスタマーサポートなど、外国人観光客に寄り添うサービス展開が新規顧客の獲得に繋がります。実際に、アニメやマンガ、ゲームといったエンタメ商品、伝統工芸品、美容製品など、日本独自の商品群は世界中から高い評価を受けており、これらを取り扱う越境ECの展開は、新規顧客獲得の大きなチャンスとなるでしょう。

2-2. 帰国後のリピート購入ニーズ

インバウンド需要の回復は、訪日外国人によるリピート購入の可能性を大いに高めます。訪日経験がある外国人観光客は、帰国後も日本の商品に対して高い興味を持ち続ける傾向があります。特に、エンターテイメントやファッション商品など、継続して消費したい商品群に対する需要は大きいです。
越境ECサイトは、これらのニーズに応えるための重要な役割を果たします。例えば、アニメやコミックのトレーディングカード、フィギュアなどのコレクターズアイテムは、訪日時に購入機会に恵まれたファンが帰国後も購入を続ける典型的な例です。これらの商品を取り扱う越境ECサイトでは、最新のリリース情報を多言語で提供し、世界中どこからでも購入できるようにすることが重要です。また、商品の在庫情報一覧をわかりやすく提供するなどの工夫も効果的でしょう。
また、ボーダーレスなファンコミュニティの形成や、多言語での翻訳された動画の同時配信により、地域による情報の時差がなくなり、世界中のファンが同時に最新情報を享受することができます。このようにして、訪日経験を通じて築かれた信頼とブランドの魅力を維持し、長期的な顧客関係を構築することが、帰国後のリピート購入を促進する鍵となります。

3. インバウンド需要回復による影響と越境EC戦略

3-1. 越境ECサイトの構築

インバウンド需要の回復は、日本製品への国際的な関心を高める絶好の機会を提供します。この機会を最大限に活用するためには、効果的な越境ECサイトの構築が不可欠です。まず、ユーザーインターフェースは、異なる文化のユーザーが直感的に理解しやすいデザインであることが求められます。サイトは複数言語に対応し、商品説明やカスタマーサービスもユーザーの言語で提供する必要があります。
SEO(検索エンジン最適化)戦略を国際的な視点で再考し、各国での検索トレンドに合わせたキーワードの選定と最適化が重要です。また、モバイルファーストのアプローチを取り入れ、スマートフォンユーザーがストレスなくアクセスできるサイト構造を実現することが求められます。
商品の物流も重要な要素です。国境を越える商品配送においては、速度とコストのバランスが重要です。消費者が求める迅速な発送を実現しつつ、配送料の削減にも努める必要があります。これには、地域別の物流ハブの設置や、複数の配送業者との連携が効果的です。また、関税徴収や輸入規制についての明確な説明も顧客満足度を高めるためには欠かせません。適切な物流パートナーを選定し、効率的な配送ルートの確立を行うことで、グローバル市場での競争力を高めることが可能です。これらの戦略は、越境ECの成功を左右する鍵となります。

3-2. 海外向けSNSの運用

海外向けのSNS運用は、越境ECの成功において重要な役割を果たします。SNSを通じて、ブランドの認知度を一定レベルまで高め、潜在顧客とのコミュニケーションを促進することができます。InstagramやFacebook、Twitterだけでなく、中国のWeChatやWeiboなど、ターゲット市場に合わせたプラットフォームの選定が重要です。
コンテンツは多言語で提供し、各国の文化や習慣に敬意を表する内容が求められます。インフルエンサーや地元の有名人とのコラボレーションを行うことで、信頼性の高いプロモーションを実現し、ユーザーエンゲージメントを高めることができます。また、リアルタイムでの反応や顧客からのフィードバックを積極的に取り入れ、サービスの改善につなげることが重要です。

3-3. 各種決済サービスの活用

越境ECでは、顧客の購入体験を向上させるために、多様な決済サービスを提供することが重要です。単に支払い手段を増やすだけでなく、売上への影響や顧客の利便性、法的リスクまで含めた総合的な施策として考える必要があります。
ここではまず、各決済サービスの特徴と導入時の注意点を整理し、その後で海外取引に伴う為替変動のリスクについて解説します。

3-3-1. 決済サービスごとのメリットと注意点

越境ECで導入される代表的な決済サービスには、以下のようなものがあります。

  • PayPal:世界的に利用者が多く、セキュリティ面で信頼性が高い。一方、取引手数料がやや高く、株式会社としての利益を圧迫する可能性があります。
  • Alipay / WeChat Pay:中国市場や訪日観光客向けに便利。地域限定の利用になることが多く、全体売上への影響を考慮する必要があります。
  • GrabPay / GCash:東南アジアで普及しており、現地の人々にとって使いやすい。しかし、開発や導入コスト、システム連携の手間が発生します。

これらのメリット・デメリットをデータに基づき分析し、資料化して社内共有することは、効率的な戦略立案に不可欠です。また、決済手段を選ぶ際は、観光客や現地の購入者など人の利用状況を踏まえた判断が重要です。

3-3-2. 為替変動のリスク

決済サービスの選択に加え、越境ECでは為替変動による売上への影響も無視できません。円安の場合は、訪日観光客や海外購入者にとって日本商品の価格競争力が高まり、売上拡大につながります。一方、円高に振れると、商品が割高になり購買意欲が低下するリスクがあります。
為替リスク対策の具体例:

  • 複数通貨表示を導入し、購入時に自国通貨で価格を確認できるようにする
  • 為替予約や一定期間の価格固定を活用
  • 過去の変動データを分析して、販売戦略や在庫管理に反映

これにより、旅や観光客を起点とした購入行動や売上変動を予測し、戦略的に対応することが可能となります。

4. 越境ECと海外の個人情報保護法

越境ECを展開する企業は、データの取り扱いに関し、海外の個人情報保護法に対応する必要があります。これは環境面(法的フレーム)だけでなく、企業の信頼性や持続的な売上に直結する課題です。

4-1. 海外の顧客データを取得する際の注意点

顧客データ(氏名、住所、メール、決済情報など)の収集時には、利用目的を明確にし、同意(人に対する説明)を適切に取得することが前提です。特に、観光客など旅を起点に購入する顧客層のデータには、利用国に応じた規制対応が求められます。サーバー環境やデータ保存の開発設計の段階から、当該国の法的環境を考慮した構築が必要です。

4-2. 欧州のGDPRや米国のCCPAなどの概要

GDPR(EU・一般データ保護規則)は、域外適用の強い規制であり、違反時には4%または2,000万ユーロの罰金の可能性があります。GoogleやMetaへの制裁事例は、規模を問わずリスクとして警鐘を鳴らします。
CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)では、消費者がデータの開示・削除を請求でき、違反には制裁が科されます。
日本企業も、SaaS利用時などにこれらの法規が適用され得るため、これらの法規に対応する体制を整備する必要があります。

4-3. 個人情報保護法に違反した場合のペナルティとリスク

個人情報保護法違反は、制裁金や事業停止だけでなく、顧客からの信頼低下というブランドへの影響をもたらします。旅行中に日本商品を購入した観光客が、帰国後「安心して使えない」と感じたら、リピート購入につながりません。
特に、SNSやオンラインでの情報拡散によるイメージダウンの拡大は速く、即座に広まりうるため、資料を活用した社員教育や内部監査、システム面のセキュリティ設計(例:暗号化、アクセス制限)は必須の施策です。

5. 海外進出・海外展開における影響

インバウンド需要の回復は、日本企業にとって海外進出・展開の絶好の機会をもたらしています。訪日外国人の増加に伴い、日本の文化や製品への国際的な関心が高まり、新たな市場への扉が開かれています。このチャンスを活かすためには、効果的な越境EC戦略が不可欠です。
まず、多言語対応の使いやすいECサイトの構築が求められます。これにより、異なる文化背景を持つ消費者にアプローチし、そのニーズに応じたサービスを提供することが可能となります。また、地域ごとの文化や消費習慣に合わせたマーケティング戦略を展開することで、ブランドの認知度と信頼性を高めることができます。
SNSを活用したプロモーションも重要です。これにより、ターゲット市場の消費者と直接的にコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めることが可能です。さらに、多様な決済方法の導入は、顧客の購買体験を向上させ、グローバルな市場での売上げ増加に直結します。

これらの戦略を踏まえた上で、日本企業はインバウンド需要の回復を最大限に活用し、持続可能な成長を遂げるための基盤を築くことができるでしょう。海外進出は多くの挑戦を伴いますが、適切な準備と戦略によって、その潜在的なリターンは計り知れないものとなります。

WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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