目次
1. インバウンド需要回復に伴う業界動向
世界中でインバウンド需要が回復し始めている今、日本企業にとって海外市場への進出が一層重要になっています。特に、越境ECは、国境を越えた商取引を促進し、新たな顧客層を開拓する大きなチャンスを提供します。本記事では、インバウンド需要の回復がもたらす影響と、効果的な越境EC戦略について掘り下げていきます。
1-1. 訪日外国人観光客数の推移
2019年、訪日外国人の旅行消費額は約4兆8,000億円に達し、日本経済にとって重要な収入源となっていました。しかし、コロナ禍の影響で、2020年と2021年は訪日外国人数が激減。2019年の260万人超から、2022年にはわずか1万6,719人にまで減少し、99.4%の大幅な減少を記録しました。
2022年10月には水際対策の緩和が実施され、その結果、訪日外国人数は徐々に回復を始めました。緩和直後の10月には約50万人を記録し、前月比で約241%増という大幅な伸びを見せました。その後も増加傾向が続き、11月には約93万人、12月には約137万人と、前月比でそれぞれ約187%、146%の増加を記録。2023年1月には約150万人に達し、前月比約109%の増加率で、着実な回復が確認されています。
この回復傾向は、訪日外国人市場に対する企業の越境EC戦略にとって、大きなチャンスとなります。訪日経験が日本商品への関心を高め、帰国後も日本の商品を購入する需要が増えることが予想されるため、この機会を生かすために、マーケティング戦略を適切に調整することが重要となります。
1-2. コロナ明けによる変化
2022年6月10日、日本政府はコロナ禍で一時停止していた外国人観光客の受け入れを再開しました。これに伴い、段階的な規制の緩和が進められ、訪日外国人観光が再び活性化し始めています。特に、円安の影響もあり、訪日観光がさらに魅力的な選択肢となり、日本国内での消費が増加しています。
この状況は、インバウンド需要の拡大と直結し、越境ECサイトの重要性が高まっています。ECサイトは、単に商品をデジタルで販売するだけでなく、様々な情報をまとめて発信するプラットフォームとしての役割も果たしています。その結果、訪日前の外国人にとって、日本製品をどこで買い物をするかの情報源として利用されることが多く、訪日時の実店舗訪問や帰国後のリピート購入につながることが期待されています。
このように、コロナ明けの変化は、越境ECを含む多くのビジネスチャンスを創出しており、戦略的なアプローチが求められています。企業は、これらの機会を活かし、新たな顧客層の開拓と持続的なビジネス成長のために、適切な戦略を展開する必要があります。
2. インバウンド需要回復による企業のメリット
2-1. 新規顧客の開拓
インバウンド需要の回復は、日本企業にとって新規顧客を開拓する絶好の機会を提供します。訪日外国人が増加することで、日本の商品やサービスに対する直接的な接触機会が増え、これが新たな顧客層の獲得に直結します。特に、エンターテインメントやファッションなど、日本が世界に誇る独自の文化コンテンツは大きな魅力です。
円安の影響もあり、日本製品は価格競争力を持ち、より多くの外国人観光客を引きつけています。このような状況は、訪日外国人向けのマーケティング活動において、特にデジタルマーケティングの活用が重要になります。越境ECサイトを通じて、訪日前に商品情報やプロモーションを提供することで、来日時の購買意欲を高めることが可能です。
また、多言語に対応したウェブサイトや、文化的な違いを理解したカスタマーサポートなど、外国人観光客に寄り添うサービス展開が新規顧客の獲得に繋がります。実際に、アニメやマンガ、ゲームといったエンタメ商品、伝統工芸品、美容製品など、日本独自の商品群は世界中から高い評価を受けており、これらを取り扱う越境ECの展開は、新規顧客獲得の大きなチャンスとなるでしょう。
2-2. 帰国後のリピート購入ニーズ
インバウンド需要の回復は、訪日外国人によるリピート購入の可能性を大いに高めます。訪日経験がある外国人観光客は、帰国後も日本の商品に対して高い興味を持ち続ける傾向があります。特に、エンターテイメントやファッション商品など、継続して消費したい商品群に対する需要は大きいです。
越境ECサイトは、これらのニーズに応えるための重要な役割を果たします。例えば、アニメやコミックのトレーディングカード、フィギュアなどのコレクターズアイテムは、訪日時に購入機会に恵まれたファンが帰国後も購入を続ける典型的な例です。これらの商品を取り扱う越境ECサイトでは、最新のリリース情報を多言語で提供し、世界中どこからでも購入できるようにすることが重要です。また、商品の在庫情報一覧をわかりやすく提供するなどの工夫も効果的でしょう。
また、ボーダーレスなファンコミュニティの形成や、多言語での翻訳された動画の同時配信により、地域による情報の時差がなくなり、世界中のファンが同時に最新情報を享受することができます。このようにして、訪日経験を通じて築かれた信頼とブランドの魅力を維持し、長期的な顧客関係を構築することが、帰国後のリピート購入を促進する鍵となります。
3. インバウンド需要回復による影響と越境EC戦略
3-1. 越境ECサイトの構築
インバウンド需要の回復は、日本製品への国際的な関心を高める絶好の機会を提供します。この機会を最大限に活用するためには、効果的な越境ECサイトの構築が不可欠です。まず、ユーザーインターフェースは、異なる文化のユーザーが直感的に理解しやすいデザインであることが求められます。サイトは複数言語に対応し、商品説明やカスタマーサービスもユーザーの言語で提供する必要があります。
SEO(検索エンジン最適化)戦略を国際的な視点で再考し、各国での検索トレンドに合わせたキーワードの選定と最適化が重要です。また、モバイルファーストのアプローチを取り入れ、スマートフォンユーザーがストレスなくアクセスできるサイト構造を実現することが求められます。
商品の物流も重要な要素です。国境を越える商品配送においては、速度とコストのバランスが重要です。消費者が求める迅速な発送を実現しつつ、配送料の削減にも努める必要があります。これには、地域別の物流ハブの設置や、複数の配送業者との連携が効果的です。また、関税徴収や輸入規制についての明確な説明も顧客満足度を高めるためには欠かせません。適切な物流パートナーを選定し、効率的な配送ルートの確立を行うことで、グローバル市場での競争力を高めることが可能です。これらの戦略は、越境ECの成功を左右する鍵となります。
3-2. 海外向けSNSの運用
海外向けのSNS運用は、越境ECの成功において重要な役割を果たします。SNSを通じて、ブランドの認知度を一定レベルまで高め、潜在顧客とのコミュニケーションを促進することができます。InstagramやFacebook、Twitterだけでなく、中国のWeChatやWeiboなど、ターゲット市場に合わせたプラットフォームの選定が重要です。
コンテンツは多言語で提供し、各国の文化や習慣に敬意を表する内容が求められます。インフルエンサーや地元の有名人とのコラボレーションを行うことで、信頼性の高いプロモーションを実現し、ユーザーエンゲージメントを高めることができます。また、リアルタイムでの反応や顧客からのフィードバックを積極的に取り入れ、サービスの改善につなげることが重要です。
3-3. 各種決済サービスの活用
越境ECでは、多様な決済オプションを提供することが、顧客の購入体験を向上させる鍵となります。クレジットカードはもちろんのこと、PayPalやAlipay、WeChat Payなど、各国で人気のある決済方法を導入することが重要です。これにより、ユーザーは自国の通貨で安心して支払いができるようになり、購入障壁が低減します。
また、地域ごとの決済習慣に合わせたフレキシブルな決済システムを構築することが望ましいです。例えば、インド市場ではUPI(Unified Payments Interface)のようなモバイル決済が非常に普及していますので、このような地域特有のシステムへの対応も考慮する必要があります。安全なトランザクションを保証するために、最新のセキュリティ技術を導入し、顧客の信頼を確保することも重要です。
4. 海外進出・海外展開における影響
インバウンド需要の回復は、日本企業にとって海外進出・展開の絶好の機会をもたらしています。訪日外国人の増加に伴い、日本の文化や製品への国際的な関心が高まり、新たな市場への扉が開かれています。このチャンスを活かすためには、効果的な越境EC戦略が不可欠です。
まず、多言語対応の使いやすいECサイトの構築が求められます。これにより、異なる文化背景を持つ消費者にアプローチし、そのニーズに応じたサービスを提供することが可能となります。また、地域ごとの文化や消費習慣に合わせたマーケティング戦略を展開することで、ブランドの認知度と信頼性を高めることができます。
SNSを活用したプロモーションも重要です。これにより、ターゲット市場の消費者と直接的にコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めることが可能です。さらに、多様な決済方法の導入は、顧客の購買体験を向上させ、グローバルな市場での売上げ増加に直結します。
これらの戦略を踏まえた上で、日本企業はインバウンド需要の回復を最大限に活用し、持続可能な成長を遂げるための基盤を築くことができるでしょう。海外進出は多くの挑戦を伴いますが、適切な準備と戦略によって、その潜在的なリターンは計り知れないものとなります。