海外進出・展開を目指す日本企業をサポートする 越境ECメディア

  • Facebook
  • LinkedIn
  • Line
  • Twitter

越境ECで海外進出・海外展開を目指す企業をサポートする 越境ECメディア

越境EC参入事例
2024.10.17

東南アジアの越境ECを成功させるためのポイントは?|市場規模からみるマーケティング戦略を解説

  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • X

1.はじめに

急速に変化するビジネス環境の中で、グローバル市場への進出は、日本企業にとって避けては通れない道となっています。特に東南アジア市場への越境ECは、地域の経済成長とデジタル化の進展により、未だかつてない進出機会を企業に提供しています。しかし、この地域独自の文化的多様性と複雑な市場環境の中で、日本企業が成功を収めることは平易な道ではありません。
本記事では、東南アジアにおける越境ECを成功に導くための戦略的アプローチを探ります。日本企業が東南アジアでの越境ECを展開する上で知っておくべき市場概況や、直面する可能性のある課題について見ていきましょう。

2.東南アジアにおける越境ECの市場規模

2-1. EC市場の規模

世界銀行のデータによると、東南アジアは近年、急速な経済成長を遂げており、特にデジタル化の進展が著しいです。東南アジア各国のインターネット普及率の上昇やモバイルインフラの整備が、EC市場の成長を後押ししています。多くの国でインターネットユーザーが大幅に増加しており、特にインドネシア、フィリピン、タイなどではデジタル経済が重要な成長エンジンとなっています。また、2020年には、COVID-19の影響でデジタルシフトが加速し、EC市場の急成長が見られました。世界銀行の報告によれば、この地域の成長は引き続き高い水準を維持しており、デジタル経済の拡大により、今後もEC市場が拡大する見込みです(出典:World Bank Open Data, https://www.worldbank.org/)。2023年の東南アジアのEC市場規模は1,000億ドルに達し、2023年から2025年までの間に、年間成長率(CAGR)は約20%を超えると考えられ、東南アジアが世界経済において高い経済成長率を誇ると予測されています。この予測は、東南アジアが世界経済において高い経済成長率を誇っていることを示唆しています。
ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10ヶ国で構成)の総人口は、2022年時点で約6.7億人で、日本の4倍以上にあたります(出典:ASEAN統計局(ASEANstats)ASEAN Statistical Yearbook, https://www.aseanstats.org/wp-content/uploads/2023/12/ASYB-2023-v1.pdf)。ASEANを1つの国であると仮定すれば、人口規模は世界3位となります。マーケット規模は、東南アジア全体で6.7億人と言われており、増加を続ける人口は豊富な消費者基盤を形成し、今後も発展が期待されています。この広大な統計は、多様な消費者ニーズと市場の可能性を示唆しており、越境EC事業者にとって東南アジアが魅力的なターゲットであることがわかります。東南アジアにおける越境EC市場の成熟度は国によって異なりますが、地域全体としてのポテンシャルは計り知れないものがあります。

2-2. 国別の市場概況

現在、東南アジアの国々では、EC市場の規模拡大が起きています。各国それぞれが独自の特性を持っており、以下はその具体例です。
マレーシアでは、人口約3,200万人のうち83%がインターネットを利用し、SNSを積極的に使用しています。SNSによるマーケティングが、マレーシアのEC市場拡大の背景にも繋がっています。マレーシアで越境ECする場合にはSNSの運用は必須だと言えるでしょう。2024年の越境EC市場収益は78億8,000万米ドル(2024年6月時点で1兆2,398億円)に達すると予測されており、2021年から2025年にかけてのEC市場の成長率は年間15%に達し、今後も20~25%の高い成長率が期待されています。いずれの参入予定カテゴリーにおいても、市場の規模が今後も増加する可能性が高いといえ、マレーシアEC市場に参入するメリットは非常に大きいです。
シンガポールは、ECが特に活発な国で、クレジットカードの保有率が高いことが特徴です。市場規模は約19億ドルと他の大国に比べると小さいものの、東南アジアの中での経済的地位を考えると魅力が大きい市場といえます。シンガポールでもEC市場が著しく成長しており、今後もこの傾向は続くと予想されます。シンガポールのECユーザーの多くは、国内の商品と海外の商品を区別せず、海外製の商品を買うことに抵抗がありません。ECユーザーは、都市部に住む若年層や中間所得層を中心に増加し、全体として、ITリテラシーが高く、新しいECサービスへの関心も強いです。
タイのEC市場規模は約50億ドルで、市場の年間成長率は13%という水準です。日本では大手ECサイトが上位を占めているEC市場において、タイでは4割ものシェアをLINE・Facebook・InstagramといったSNSが占めています。タイのインターネット普及率は日本に比べるとまだまだで、スマホ経由でインターネットを閲覧するユーザーの率が85.5%と非常に高く、スマホからECサイトを利用する率が高いです。SNSは、特にFacebookの活用が目立ち、SNS広告を通じたマーケティングが有効であることが知られています。2025年には2020年比で20倍の市場規模に達すると予想されており、日本製品の人気が高いことから、越境EC参入の際の最初の出店でタイが選ばれることが多いです。
インドネシアは、人口が約2億6,000万人(2017年)で、世界で4番目に人口が多い国です。インドネシア人口の特長と言えば、若さです。平均年齢は29歳と、非常に若者が多い国です。市場規模は200億ドルを超え、成長率は12%と報告されています。2025年までに市場規模が48倍になるとも推定されており、東南アジアの中でも最も伸び率の高い国とされています。インターネット普及率は半数程度ながら、モバイル端末の保有率は100%を超えています。先進国の失速が懸念される昨今、次世代を牽引する国の一つとしてインドネシアに期待が寄せられています。まだ若い国であるインドネシアには伸び代があり、こういった将来性はインドネシアの魅力の一つと言えそうです。
ベトナムのEC市場は、2023年に約500兆VNDという驚異的な数字を記録しました。これは前年の399兆VNDを大きく上回るもので、ベトナムのEC市場の拡大は著しいです。ベトナムにおけるEC市場の急成長は、大手のECプラットフォームによって牽引されています。特に、TikiやSendoなどの地元発のECプラットフォームが人気を集めています。ライブストリーム販売やインフルエンサーとのコラボレーションは、ベトナムの若者に特に人気のあるオンラインショッピングの形態です。これらの方法は、商品情報をリアルタイムで入手できるだけでなく、販売者やインフルエンサーと直接交流ができるなど、従来のオンラインショッピングにはない魅力を提供し、消費者の購買意欲を刺激しています。日本企業も、ベトナムEC市場に参入する際には、それらを積極的に活用し、地元の消費者にアプローチすることが需要です。人口も1億人を超え、今後さらなるEC市場の拡大が予想されています。
これらの国々は、成長率、インターネット及びSNSの普及、消費者行動の特性など、それぞれ異なる要因が市場規模の拡大に影響しています。そして、東南アジアにおける越境ECの可能性は、このように国別に見ても非常に大きいことが見てとれます。その一方で、同じ東南アジアといっても、国民性や経済状況、文化や法制度などは各国で大きく異なるため、自社に適した国を見極めることが参入のキーポイントになります。

2-3. 越境ECにて東南アジアが注目されている要因

東南アジアが越境EC市場として注目される要因は、人口増加、経済成長、インターネット環境の急速な普及、SNS利用率の高さ、そしてコロナウイルス感染症の流行によるEC需要の高まりといった複数の要素によって支えられています。
この地域は人口増加が顕著であり、特に若年層が多いことが特徴です。これは、将来的に消費者基盤がさらに広がること、すなわち越境ECの潜在的な市場規模が大きくなることを意味しています。また、経済成長もこの地域の重要な特徴で、増加する可処分所得はオンラインショッピングへの支出拡大に直結しています。
インターネット環境の急速な普及も、東南アジアにおける越境EC市場の拡大に不可欠な要素です。高速インターネットのアクセスが向上し、スマートフォンが普及したことで、オンラインでの購入が以前にも増して容易になりました。さらに、SNS利用率の高さはこの地域独特の特徴であり、消費者は製品情報を共有し、購買決定をSNSのトレンドに基づいて行うことが多いです。このようにSNSは、東南アジアにおいて商品の発見から購買に至るまでのプロセスにおいて中心的な役割を果たしています。
コロナウイルス感染症の流行は、世界中でオンラインショッピングへの依存度を一気に高めました。特に東南アジアでは、実際に店舗で買い物することが困難になったことから、EC市場が急速に成長しました。コロナ禍により、多くの消費者がオンラインショッピングを経験し、越境ECの需要も加速しました。
これらの要因は相互に作用し、越境EC事業者にとって東南アジアを非常に魅力的な市場にしています。人口動態、技術的進歩、消費者行動の変化、そしてグローバルな危機が、この地域におけるオンラインショッピングの未来を形作っています。
また、世界の他の地域と比較した場合、アメリカや中国などの市場が確立されている地域に参入するよりも、これからの成長が期待されている東南アジアに参入するほうがより多くの可能性を追及することができます。そして、東南アジアは日本から距離が近いこともあり、地理的・文化的背景に多少の類似性があり、ユーザーニーズの分析・把握が比較的スムーズに行えます。さらに、地理的な近さによる、物流コスト削減ができるという利点もあります。

2-4. 東南アジアの消費者の特徴とデジタル利用動向

東南アジア地域は、人口増加と中間層の拡大、スマートフォン普及の急速な進展を背景に、世界で最もEC市場の成長が著しい地域の一つです。とりわけ、デジタルリテラシーの高い若年層が消費の中心を担っており、SNSやオンラインコンテンツを通じて情報収集から購買までを一貫して行う傾向が顕著です。

若年層中心の消費構造
インドネシア、ベトナム、フィリピンなどでは、人口の半数以上が35歳未満という若年構成となっており、デジタルデバイスの使用に慣れた「モバイルネイティブ層」が消費を牽引しています。この層は商品を購入する際、価格だけでなく「SNS上の話題性」や「インフルエンサーの評価」を重視する傾向があります。企業側は、広告やプロモーションをSNS中心に最適化することが求められます。

ソーシャルメディアが購買導線に
東南アジアでは、SNSが情報発信の場にとどまらず、購買プラットフォームとしても機能しています。InstagramやTikTok、Facebook、YouTubeでは、ライブ配信による商品紹介やレビュー投稿が日常的に行われ、視聴者がそのまま購入ページに遷移する仕組みが整備されています。特にTikTok Shopのような「ライブコマース」は若年層に人気で、リアルタイム性とエンタメ性を兼ね備えた新しい購買体験として定着しつつあります。

コミュニティを重視する消費行動
東南アジアの消費者は、他者からの推薦や口コミを非常に重視します。信頼できる知人やインフルエンサーの意見が購買決定に強く影響し、「フォロワー数」よりも「信頼性」が重視される傾向にあります。そのため、企業は著名インフルエンサーだけでなく、地域コミュニティに根ざしたマイクロインフルエンサーを活用し、現地の文化や言語に寄り添った発信を行うことが効果的です。

ローカル志向とグローバル志向の共存
近年、東南アジアの消費者は日本や韓国など外国ブランドへの関心を高めていますが、一方で「自国らしさ」や「宗教・文化的価値観」を尊重するローカル志向も根強く残っています。特にマレーシアやインドネシアではハラル認証への信頼度が高く、食品・化粧品などで宗教的配慮を欠くと販売機会を失うリスクがあります。グローバルブランドであっても、地域文化や慣習を理解したローカライズが不可欠です。

決済手段の多様化とモバイル決済の普及
東南アジアでは、クレジットカードの普及率が依然として低い国も多く、代金引換(COD)やモバイルウォレットが主流です。特にインドネシアやフィリピンでは、電子ウォレットによる支払いが急増しており、GrabPayやGoPay、ShopeePayといったローカルアプリの利用率が高まっています。事業者は現地で普及している決済手段に対応し、セキュリティ基準を満たすことが信頼構築の前提条件となります。

オンラインとオフラインの融合
近年は、オンライン販売とオフライン体験を組み合わせた「オムニチャネル戦略」も重視されています。ECで商品を認知し、実店舗やポップアップストアで体験した上で購入に至るケースも多く、オンライン広告とリアルイベントを組み合わせた施策が有効です。現地でのブランド認知を高めるためには、オンライン完結型よりも体験型のプロモーションが成果を上げています。

3.東南アジアで越境ECを開始するための流れ

東南アジアに向けて越境ECを開始するためには、戦略的な計画と丁寧な準備が必要です。成功への道を切り開くためのガイドラインとして、以下のステップを参考にしてください。

1. 商品を用意する
販売する商品候補を慎重に検討します。日本で事業展開している場合は、自社商品の中で海外向けに販売できそうな商品を絞り込みましょう。新しく事業を立ち上げる場合は、参入先のユーザーが好む商品をピックアップしましょう。この段階では、市場調査を行い、東南アジアの消費者が何を求めているかを理解することが重要です。地域の文化や好みに合わせた商品の選定が、後の成功に直結します。また、品質管理と供給能力の確保も、この初期段階で検討すべき重要なポイントです。

2. ターゲットを決める
次に、具体的なターゲット市場を一定の基準で決めます。東南アジアは多様な国々から成り立っており、各国で消費者のニーズや行動が異なります。市場調査を通じて、自社の商品が求められる国やユーザーを見定めます。どの国をターゲットにするか、またその中でもどのような顧客セグメントを狙うかを明確にすることで、マーケティング戦略をより効果的に計画できます。

3. ECサイトを構築する
ターゲットが決まったら、ECサイトの構築に移ります。この際、利用者の利便性を最優先に考え、言語選択肢の提供や地元通貨での価格表示など、地域に合わせたカスタマイズが重要です。多くのユーザーがスマートフォンを通じて購入するため、モバイル対応は必須でしょう。使いやすいモバイルインターフェースの設計に努めます。また、後述するように大手のECプラットフォームを利用し越境EC事業を始めることも可能です。

4. 配送方法や発送元の倉庫を決める
商品を販売する準備ができたら、配送方法と発送元の倉庫を決めます。東南アジアでは、配送インフラの整備度合いが国によって異なるため、効率的で信頼性の高い配送パートナーを選定することが重要となります。また、迅速な配送を実現するために、地域内に複数の配送センターを設けることも検討します。同時に、商品の輸入に関する法律、関税、消費税などの情報を把握し、商品が通関で止まるような事態が起きないよう、販売から配送までをスムーズに進めるための準備を行いましょう。

5. 商品を販売する
全てが整ったら、商品の販売を開始します。しかし、販売開始と同時に終わりではありません。市場動向のモニタリング、顧客からのフィードバックの収集、そしてそのフィードバックを基にしたサービスの改善が継続的に必要です。また、マーケティング戦略の最適化も重要で、SNSマーケティングやインフルエンサーマーケティングなど、地域に合わせたアプローチでブランドの認知度を高めていきます。

これらのステップを踏むことで、東南アジア市場での越境EC事業を成功に導くことができます。地域の特性を理解し、積極的に順応することが、その鍵を握っています。

4.東南アジアで活用されている越境ECプラットフォーム

自社で越境ECサイトを立ち上げる際には、日本国内だけでなく海外の法的な規制について十分に調査をし利用規約を定めなければなりません。これらを怠ると予期しない損失を被るリスクがあります。また、多言語対応で地域に合わせたカスタマイズは必須で、サイト構築には大きな手間と負担がかかります。既存の越境対応ECプラットフォームに自社店舗を出店して販売する方法があります。自社でサイトを構築する手間が省け、多数存在する既存のユーザーにアプローチすることもできます。東南アジアの越境EC市場は、複数の強力なプラットフォームによって支えられています。東南アジア市場で強い影響力を持つ、プラットフォームの特徴を理解しておくことは、東南アジア越境ECの成功に有用です。ここでは、主要な5つのプラットフォームについて紹介します。

Shopee( https://shopee.com/
Shopeeは、東南アジアを中心に活動する主要なオンラインショッピングプラットフォームの一つです。利用している人数はおよそ6億人以上です。ユーザーフレンドリーなインターフェイスと、多様なカテゴリーの商品が揃っていることが特徴となっています。シンガポールに本社を置き、日本から販売を行う場合、シンガポール、台湾、タイ、マレーシア、フィリピンに英語で出店できます。また、Shopeeは、無料の配送サービス、安全な取引が保証された決済システム、出店者自ら問い合わせ対応を行うため顧客との距離が近く、スピーディーなやりとりを行えるのが特徴です。これらの特徴が、地域内での急速な成長と人気を後押ししています。

Lazada( https://www.lazada.com/
Lazadaは、アリババグループが運営する東南アジアの主要なECプラットフォームの一つです。東南アジアのAmazonと言われ、仕組みが似ており、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国でサービスを提供しています。Lazadaは、幅広い品揃え、地域に根ざしたマーケティング戦略、そして信頼性の高い物流ネットワークを通じて、消費者と売り手双方に魅力的なサービスを提供しています。また、LazMallなどのプレミアムサービスを通じて、正規品のみを取り扱うブランドの信頼性も高めています。2030年には3億人にサービスを提供することを目指して事業拡大を進めています。

Bukalapak( https://www.bukalapak.com/
Bukalapakは、インドネシア発のECプラットフォームで、中小企業や個人売り手が容易にオンラインで商品を販売できるよう支援しています。利用者は、家電からファッション、手工芸品に至るまで、あらゆる種類の商品を見つけることができます。Bukalapakは、ユーザーフレンドリーなプラットフォームと効率的な決済システム、ローカルコミュニティへの強いサポートを特徴としており、インドネシア国内で急成長を遂げています。現時点では、日本からの越境ECに対応していていません。

Tiki( https://tiki.vn/
Tikiはベトナムの主要なオンライン小売業者の一つで、幅広い製品カテゴリーを扱っています。本や電子機器からビューティー製品、生活用品まで、さまざまなニーズに対応しています。Tikiは、迅速な配送サービス、優れた顧客サービス、そして使いやすいインターフェースで評価されています。また、TikiNOWというプレミアムサービスを提供し、一部の地域での即日配送オプションを消費者に提供しています。現時点では、ベトナム・中国・台湾・シンガポールからのみ利用可能となっており、日本からの登録はできません。

Sendo( http://sendo.vn/
Sendoは、ベトナムに拠点を置くもう一つの主要なECプラットフォームです。ベトナム国内において物流がそれほど盛んではない地域にも配送できるなど、地元の消費者に特化したサービスを提供し、特に地方都市や田舎の市場に強い影響力を持っています。Sendoは、地元の消費者に合わせたマーケティング戦略で知られ、ファッション、家電、生活用品など、多岐にわたる商品カテゴリーを提供しています。特に地元の中小企業や工芸品製作者にとって販売の場として重要な役割を果たしており、地域社会の経済発展に寄与しています。また、SendoはSenPayという独自の決済システムを提供し、安全かつスムーズなオンライン取引を実現しています。

これらの越境ECプラットフォームは、東南アジアにおけるデジタル経済の成長と消費者行動の変化を反映しています。各プラットフォームは、地域ごとの独自の特性とニーズに応じたサービスを展開し、東南アジアにおけるオンラインショッピングの発展に大きく貢献しています。これらのプラットフォームを理解し、自社のビジネスに最適なプラットフォームを選択することで、越境EC事業者は広大な市場へと容易にアクセスし、地域内外の消費者に自社の製品やサービスを提供することが可能になります。

5.東南アジアの主要国別マーケティング戦略

東南アジアの市場は、言語・宗教・文化・購買習慣が国ごとに異なる多様な構造を持っています。そのため、地域全体を一括りにした戦略ではなく、各国の消費特性に合わせたマーケティングが重要です。

5-1. 各国で主流のSNSと効果的なインフルエンサー活用法

インドネシアでは、TikTok・YouTube・Instagramが最も影響力を持っています。特にTikTok Shopを活用したライブ配信販売は非常に人気で、視聴者がリアルタイムでコメントや購入を行うインタラクティブな仕組みが成功の鍵です。現地語による動画発信や家族・友情をテーマにしたストーリーテリングが共感を呼びます。

マレーシアでは、ハラル志向を意識したインフルエンサー選定が重要です。フォロワー数よりも信頼感を重視し、宗教的価値観を尊重する発信が効果的です。美容・健康・食品分野ではハラル認証の訴求がコンバージョンを高めます。

シンガポールは高所得層が多く、ブランド価値や品質重視の傾向があります。YouTubeやInstagramを中心に、専門性を持つクリエイターによるレビューや比較動画が有効です。英語が主要言語のため、グローバルブランドの情報発信も比較的容易です。

タイでは、FacebookやLINE、TikTokが主流で、ライブ配信を通じた販売が定着しています。消費者は「楽しさ」や「共感」を重視するため、エンタメ要素のあるキャンペーンが高い反応を得やすい傾向があります。

ベトナムでは、若年層を中心にTikTokとYouTubeの利用が急増しています。製品デモやレビュー動画を短時間でわかりやすく伝えるコンテンツが好まれ、実用性とトレンド性を両立した発信が求められます。

インフルエンサーマーケティングにおいては、単なる「知名度」よりも「地域密着」「文化理解」「双方向性」の3要素が成功の鍵となります。

5-2. イスラム市場向けハラル対応の重要性

イスラム教徒が多数を占めるマレーシアやインドネシアでは、ハラル対応は越境EC戦略の中核をなします。ハラル認証は単に宗教的な信頼だけでなく、「品質・安全・倫理性」を象徴するブランド要素として機能しています。

対応すべき主なポイントは以下の通りです:
1. ハラル認証の取得
食品や化粧品、サプリメントなどでは、現地の認証機関(例:JAKIM、MUI)による正式な認証が求められます。
2. 宗教的配慮を含む広告表現
女性の露出、飲酒表現、非ハラル素材の描写などは避け、イスラム文化に沿ったビジュアルとコピーを意識します。
3. ラマダン・ハリラヤ商戦の活用
断食月(ラマダン)や断食明け(ハリラヤ)期間は年間最大の購買シーズンです。ギフト需要が高まり、家族をテーマにした温かみのある広告が効果的です。

ハラル対応を進めることは、単なる宗教対応にとどまらず、「信頼性と倫理性の象徴」としてブランドの国際的な信頼向上にもつながります。

5-3. セール時期や文化・宗教に合わせたプロモーション

東南アジアでは、国ごとに異なる祝祭やセールイベントが存在し、それに合わせた販促展開が成果を大きく左右します。

代表的なものとして、年末商戦「12.12セール」、独身の日「11.11セール」、イスラム教の「ラマダン・ハリラヤ商戦」、中国系の「旧正月(チャイニーズニューイヤー)」、タイの「ソンクラーン(タイ正月)」などがあります。

これらの期間にはオンラインモール全体が大規模割引を展開するため、広告予算を集中投下し、タイムセールや限定クーポン施策を行うことが有効です。また、宗教行事や季節要因に合わせた商品企画(例:ラマダン明けのギフトセット、雨季対策グッズ、UVケア商品など)も購買意欲を高めます。

さらに、現地語による広告コピーやビジュアルを採用することで、文化的親近感を演出することができます。

6.東南アジアで越境ECの開始を検討する際の注意点

東南アジアでの越境EC展開は大きな成長機会を提供しますが、同時に法規制や税制、知的財産、個人情報保護などのリスク管理が欠かせません。

6-1. 各国の法規制と輸入販売ライセンス

東南アジア各国では、EC事業者に対する法規制が年々強化されています。輸入許可や販売ライセンスが必要な国も多く、対象国ごとに制度を正確に把握する必要があります。インドネシアではSNS経由の販売や広告にも新たな規制が設けられ、現地法人登録が義務化される場合もあります。事業開始前に、輸入関連法令・禁止品目リスト・商標規定を確認することが重要です。

6-2. 関税・VAT(付加価値税)など税務の基礎知識

越境ECでは、輸出入時に関税や付加価値税(VAT・GST)が発生します。課税基準や免税枠は国ごとに異なり、誤解すると想定外のコスト負担が生じる可能性があります。

例として、シンガポールは8%のGST、タイは7%のVAT、マレーシアは6%のSST、インドネシアとベトナムは10%のVATが課税されます。さらに、低額輸入品の免税枠(例:シンガポールではCIF 400SGD以下)なども確認が必要です。販売額が一定を超える場合、現地での税務登録が義務化されることもあるため、税務専門家の助言を受けながら体制を整えることが推奨されます。

6-3. 知的財産権(商標・意匠)の保護と模倣品対策

東南アジアでは、商標登録が「先願主義」で運用される国が多く、現地で先に登録した企業に権利が帰属します。そのため、進出前に商標・意匠・ロゴを現地登録しておくことが不可欠です。模倣品や海賊版がECプラットフォーム上で流通することもあるため、定期的なモニタリングや削除要請を行う体制を構築しましょう。

6-4. 各国の個人情報保護法制への対応

デジタル取引の増加に伴い、東南アジア各国では個人情報保護法(PDPAなど)の施行が進んでいます。個人データの収集・保存・国外移転には、同意取得や契約条項(SCC)などの遵守が必要です。

事業者は、個人情報の利用目的を明示し、多言語対応のプライバシーポリシーを整備することが求められます。データ漏洩時には高額な罰金や業務停止処分のリスクもあるため、アクセス制限・暗号化・監査ログなどのセキュリティ対策を講じることが不可欠です。

7.海外進出・海外展開における東南アジア市場

海外進出や海外展開は、企業にとって大きなチャンスをもたらす一方で、その成功には言語や文化の違い、市場調査の難しさ、物流のハードルなど多くの課題があり大きなコストがかかります。東南アジアは、人口とGDPが増加を続けており、2030年にかけて堅調な経済成長が見込まれています。ASEANの経済成長率は年平均約5%と世界の平均を上回るペースで推移しているため、市場は急速に拡大し、それに伴いビジネスチャンスも広がっています。この地域への参入は他の地域と比べてより多くのメリットがあると考えられます(出典:ADB – Asian Development Outlook, https://www.adb.org/outlook/editions/april-2024 )。
東南アジアへの越境ECは、ターゲットとする市場の深い理解、文化や法律、消費者行動の違いへの適応、そして地域特有のビジネス環境への柔軟な対応が成功への鍵を握ります。これらのポイントを踏まえ、戦略的な計画と地域に根差したアプローチを行うことによって、東南アジア市場への展開が大きな成功を収める可能性が広がっていきます。

WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • X
越境ECメディアは、
越境ECで海外進出・海外展開を
目指す企業に向けた最新の情報を、
越境ECを専門とする弁護士が解説する
メディアサイトです。

【運営者】
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所
代表弁護士 小野智博(東京弁護士会所属)
  • Facebook
  • LinkedIn
  • LINE
  • X

海外進出・展開を目指す日本企業をサポートする
タンデムスプリントグループの
メルマガ

EC・越境ECの法律情報や最新情報をお届け。
無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

海外進出・海外展開の法律情報や最新情報をお届け。
無料で読めるメルマガの登録はこちらから。

ページトップへ戻る