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越境EC参入事例
2024.10.17

アメリカでの越境EC展開を行うメリットとは?市場規模からみるマーケティング戦略を解説

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1. はじめに

アメリカ市場は、その巨大な規模と多様性により、世界から注目されています。特に、近年急速に拡大する越境EC市場は、多くの日本企業にとって大きなビジネスチャンスを提供しています。アメリカでの越境EC展開には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
本記事では、アメリカ市場の傾向を概略するとともに、アメリカ市場でのECビジネス展開のメリットやアメリカ越境EC市場への参入方法について詳しく掘り下げていきます。アメリカ市場への参入と成功のための戦略について、詳しく見ていきましょう。

 

2. アメリカにおける越境ECの市場規模

2-1. 市場概況

2022年時点で、アメリカのEC市場規模は約110兆円に達しています。更に、2027年までには市場規模が200兆円にまで成長する見込みです。この急速な拡大は、アメリカ市場のデジタル化が進展し、消費者のオンラインでの購買力が増大していることを示しています。
日本からアメリカへの越境ECも、その市場規模の拡大に大きな影響を受けています。経済産業省が2021年に発表した「電子商取引に関する市場調査」によれば、日本からアメリカへの越境EC総額は約1.2兆円に達しています。これは、日本国内のEC市場規模である約13.3兆円と比較しても相当な規模です。

さらに、アメリカのEC化率は2021年において13.2%であり、日本の8.78%を上回っています。この数字からも、アメリカ市場がオンラインでの消費が進んでいることが伺えます。まとめると、アメリカの越境EC市場は大きな魅力を持っており、日本企業にとって多くのビジネスチャンスが存在します。

2-2. 越境ECにてアメリカが注目されている要因

アメリカにおける越境EC市場は、その巨大な経済規模と多様な消費者層から、多くの企業が注目しています。アメリカは世界最大の経済大国であり、消費者の購買力が高いため、市場へのアクセスは成長にとって大きな機会です。特に、近年のデジタル化の進展により、オンラインでの購買行動が急速に増加しており、COVID-19の影響でさらに加速しました。これにより、アメリカ市場は越境EC展開に適した環境となっています。
アメリカの消費者は多様であり、さまざまな商品やサービスに対する需要が存在します。経済産業省の「平成28年度 電子商取引に関する市場調査」によると、アメリカの消費者が越境ECを利用する主な理由として、「安価に商品を購入できること」が挙げられています。次に多い理由は、「国内で購入できない好きなブランドや商品があること」や「国内では手に入らないユニークな商品が欲しいこと」です。
現代では、インターネットを通じて商品の価格を簡単に比較し、そのままオンラインで購入することが容易になっています。そのため、価格の安さが越境ECを利用する大きな決め手の一つとなっているのです。しかしながら、アメリカの消費者が求めているのは単に安価な商品だけではありません。海外でしか購入できない高品質な商品に対する需要も非常に高いのです。これらの背景を踏まえると、アメリカ市場での越境EC展開は、多くの企業にとって魅力的なビジネスチャンスとなっています。市場規模の拡大や顧客層の多様化に対応しつつ、適切なマーケティング戦略を構築し、成功を収めることが可能です。

3. アメリカ市場での越境EC成功のために日本企業が意識すべきポイント

・アメリカでは買えない日本独自の商品を意識する
前項で述べたように、アメリカの消費者が越境ECを利用する理由の一つは「安価なもの」を購入することですが、もう一つの理由は「アメリカ国内では買えないもの」を求めることです。この点から、日本企業がアメリカ越境EC事業を成功させるための一つの戦略として、「日本独自の商品」を販売することが推奨されます。

現在の円安の状況を考えると、価格面での競争力はある程度期待できますが、それ以上に重要なのは「国内では買えないもの」を提供することです。具体的には、日本の伝統文化やサブカルチャーに関連する商品が挙げられます。例えば、藍染や九谷焼といった日本の伝統工芸品はアメリカでも高い人気があります。また、日本の技術力を活かした工具なども、特定の愛好者にとっては非常に魅力的な商品です。
さらに、サブカルチャーに関連する商品も注目されています。漫画や同人誌、フィギュアやプラモデルなどは、日本国内だけでなくアメリカでも多くのファンがいます。

・現地ニーズの理解と適応
前述のとおり、日本からアメリカに越境ECで商品を販売する際には、「アメリカでは買えない、日本独自のもの」を意識することが重要です。ただし、モノによってはアメリカの消費者にとってサイズが小さすぎるなどの理由から売れないこともあります。先だって現地のニーズをしっかりと理解し、それに適応することが成功の鍵となります。具体的なマーケットリサーチや現地のフィードバックを活用し、商品ラインナップやプロモーション戦略を柔軟に調整することが求められます。

4. アメリカで越境ECを開始するための流れ

アメリカで越境ECを開始するためには、慎重な計画と準備が必要です。以下に、一般的な流れを解説します。

(1) 市場調査とニーズの分析
アメリカ市場におけるニーズや競合状況を調査し、市場分析を行います。消費者の嗜好や需要、競合他社の展開状況などを把握し、自社の商品やサービスがどのように受け入れられるかを予測します。

(2) 法務・税務の確認
アメリカに進出する際には、現地の法務や税務に関する知識が必要です。法律や規制、税金の徴収ルールなどの情報を調査し、法的・税務的なリスクを最小限に抑えるための対策を検討します。また、法律顧問や税務アドバイザーと協力して、適切な対応策を策定します。セミナーや専門家による助言を受けることで、現地の法務・税務事情についてより深く理解を深めることができるでしょう。

(3) ビジネスモデルの構築
アメリカでの越境EC展開に適したビジネスモデルを構築します。販売チャネルや流通手段、製品やサービスの価格設定などを決定し、市場に適したビジネス戦略を策定します。また、物流や在庫管理、顧客サポートなどのインフラも整備します。

(4) 越境ECプラットフォームの選定
アメリカ市場における越境EC展開には、適切なECプラットフォームの選定が必要です。一定のインフラが揃っているAmazonやeBayなどの大手プラットフォームを活用するか、自社ECサイトを構築するかなど、適切なプラットフォームを選択します。選定の際には、プラットフォームごとの特徴や手数料、規制などについて一覧表を比較検討し、最適な選択肢を見つけます。

(5) 決済手段の選定と準備
アメリカ市場向けに適した決済手段を選定し、導入準備を行います。クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット、銀行振込など、アメリカの消費者が利用しやすい決済方法を導入し、決済システムの整備を行います。安全で迅速な決済体験を提供することで、顧客の信頼を得ることが重要です。

(6) 商品やサービスの準備
アメリカ市場向けに販売する商品やサービスを準備します。現地の消費者ニーズに合った商品やサービスのラインナップを構築し、品質や価格、ブランディングなどに配慮します。また、商品のパッケージングやマーケティング資材の準備も行います。

(7) マーケティング戦略の立案
アメリカ市場での越境EC展開には、効果的なマーケティング戦略が不可欠です。SNS広告や検索エンジン広告、コンテンツマーケティングなど、適切なチャネルを活用してターゲット層にリーチする戦略を立案します。また、販促キャンペーンやクーポン、セールなどの施策も検討します。

(8) ローンチと運用
準備が整ったら、越境ECのローンチを行います。商品やサービスの公開、プロモーションの実施、顧客対応の体制構築などを行い、販売を開始します。その後は、販売状況のモニタリングや顧客フィードバックの収集を行いながら、運用を継続し、戦略の改善や成果の最大化を図ります。

5. アメリカで活用されている越境ECプラットフォーム

アメリカで活用されている主要な越境ECプラットフォームは、Amazon、Walmart、eBay、Shopifyなどの事例が挙げられます。

・Amazon

まず、Amazonは世界最大のオンラインマーケットプレイスであり、アメリカでも圧倒的なシェアを誇ります。Amazonの広大な顧客基盤や高い信頼性、充実した物流サービスなどが、越境ECを行う企業にとって魅力的な特徴です。また、AmazonはFBA(Fulfillment by Amazon)サービスを提供しており、商品の保管から発送までの一連の流れをAmazonのインフラを活用して管理することができます。
また、Amazonグローバルセリングは、越境ECを支援するプログラムで、日本語でのサポートも受けられるため、日本企業にとっても非常に利用しやすい環境が整っています。Amazonのプラットフォームは、膨大なデータ分析やAI技術を駆使して、消費者行動を予測し、パーソナライズされた商品提案が可能であり、企業が効率的にターゲット顧客にアプローチするための強力なツールとなっています。

・Walmart

次に、Walmartはアメリカを代表する大手小売業者であり、近年EC事業の強化に力を入れています。Walmart.comはアメリカ国内でのEC市場において大きな存在感を持ち、多くの消費者が利用しています。Walmartはオムニチャネル戦略を進めており、ECと実店舗を連携させることで、顧客により良いショッピング体験を提供しています。日本企業の参入はあるものの、出店の審査基準は高く、現在は日本企業の競合が少ない状況です。WalmartのECプラットフォームは、特に価格に敏感な消費者層をターゲットにしており、低価格戦略と豊富な商品ラインナップが強みです。また、Walmartは配送の迅速さを重視しており、Amazonと競う形で次の日配送や即日配送などのサービスを提供しています。こうした顧客満足度を高める施策が、WalmartのECプラットフォームの成功を支える要因となっています。日本企業の今後の展開次第では、出店先の候補として考慮される可能性があります。

・eBay

eBayは世界的に有名なオークションサイトであり、アメリカでも広く利用されています。eBayは個人売買だけでなく、企業による新品商品の販売も行われており、幅広い商品が取り扱われています。eBayではオークション形式や直接買い手への提供など、多様な販売形態が特徴です。日本企業が出店する際には、日本の現地法人であるイーベイ・ジャパン株式会社から日本語でのサポートを受けることができるため、初めての越境ECにも適しています。eBayは、グローバルな市場アクセスを可能にし、特にニッチな市場をターゲットとする企業にとって非常に有利なプラットフォームとなっています。

・Shopify

Shopifyはアメリカを含む世界中で急速に普及しているECプラットフォームです。Shopifyは中小企業や個人事業主向けに使いやすいECサイト構築ツールを提供しており、多くの企業が自社ECサイトを構築し、グローバル展開を行っています。Shopifyはカスタマイズ性が高く、様々な国の業種やニーズに対応することができます。また、Shopifyは豊富なアプリやプラグインが用意されており、企業の特定のニーズに応じて機能を拡張することが可能です。さらに、Shopifyはソーシャルメディアとの連携が強く、InstagramやFacebookなどを通じて商品を直接販売することも可能です。こうした柔軟性と機能の充実が、Shopifyを選ぶ理由となっており、特にブランドイメージを重視する企業にとって魅力的な選択肢です。

これらの越境ECプラットフォームは、アメリカ市場での越境EC展開を支援するための強力なツールとなっています。企業はそれぞれの特性や利点を活かしながら、自社のビジネス戦略に合ったプラットフォームを選択し、効果的な越境EC展開を行っていくことが重要でしょう。また、これらのプラットフォームを活用する際には、プラットフォームごとの規制や手数料、物流のオプションなどを十分に理解し、自社の目標やリソースに最適な選択をすることが成功への鍵となります。

6. アメリカ越境ECで注意するべき制度

・「OECD」ガイドライン

アメリカの商取引を監督しているのは、連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)という連邦政府の機関です。FTCは消費者保護を目的として、経済協力開発機構(OECD)の「電子商取引における消費者保護(OECD勧告)」ガイドライン(以下「OECDガイドライン」といいます)を公式に採用しています。そのため、日本からアメリカに進出し、ECビジネスを展開する場合には、2016年に制定されたOECDガイドラインを遵守する必要があります。ガイドラインの違反は、FTCによる調査や厳しい罰則の対象となる可能性があるため、十分な注意が必要です。
OECDガイドラインの一般原則では、8つの基本原則が掲げられており、EC取引においては、その他の商取引で与えられる消費者保護と同等か、それ以上のレベルの保護を求めています。OECDガイドラインでは、EC事業者は、公正な広告を行い、ウェブサイト上で事業者自身の業種や所在地、商品とその価格、保証、返品やクレームの方法、取引保護上の措置等を明示することが求められています。

・FDAルール

FDA(Food and Drug Administration)は、食品、医薬品、化粧品などの安全性を監視・取り締まるアメリカの機関です。越境ECでアメリカへ食品や医薬品を輸出する場合、FDA認証の取得が必要になります。特定の品目をアメリカ国内に輸出する際には商品をFDAに登録することが義務付けられており、FDAの規制を遵守しない場合、商品はアメリカへの輸入が禁止される可能性があります。FDAが規制する商品には以下が含まれます。
・食品・飲料
・化粧品
・医薬品
・医療機器(メディカルデバイス)
・放射線機器
商品によっては取得方法が異なるため、専門のFDA取得代行業者に依頼することをお勧めします。FDAの規制を遵守しない場合、商品はアメリカへの輸入が禁止される可能性があります。

・マーケティング規制

アメリカには消費者を守るために、以下のように様々なEコマース展開におけるマーケティング規制が設けられています。
・価格設定
消費者を騙したり誤解させる価格表示を行わないこと。
・比較広告
自社または競合相手の特徴や品質を誤解を招くような方法で伝えないこと。
・子供を対象とする広告
商品やその性質に関して、子供に不正確または誤解を生じさせる情報を伝えないこと。
・プロモーション
富くじ(ロッテリー)やクローズド懸賞は禁止されており、懸賞には連邦および州法に基づく表示や手続きの規定が存在しています。
・証言広告
広告主と証言者との間に「重大な関係」がある場合は、その関係を明確に開示することが求められています。
・ユーザーコンテンツ
ユーザーコンテンツが第三者の知的財産権や名誉などの権利を侵害しないようにモニタリングする義務があります。
・電子メールマーケティング
CAN-SPAM法に基づき、無差別な迷惑メールや商用電子メールの送信は禁止されており、オプトアウトの通知義務があります。

7. 海外進出・海外展開における影響

アメリカでの越境EC展開は、日本企業にとって多くのメリットがあります。まず、アメリカ市場はその巨大な規模と多様性から、成長の機会が豊富です。また、アメリカ市場では日本では買えない独自の商品やブランドに対する関心が高く、ニーズに応えることで顧客の獲得が見込めます。海外進出へのハードルの高さを感じる場合には、クロネコヤマトなどの日系物流システムを活用することで、効率的な物流体制を確立し、顧客に迅速な配送を確立することも検討できます。
さらに、アメリカ市場ではデジタル化が進んでおり、オンラインショッピングの需要が高まっています。このトレンドに乗り遅れないよう、日本企業はオンラインプラットフォームやSNSなどを活用したマーケティング戦略を展開することが重要です。アメリカ市場における顧客の行動や好みを分析し、適切なプロモーションやコンテンツを提供することで、顧客の心を掴むことができます。
また、アメリカ市場では競争が激しいため、独自性やブランド力の強化が求められます。日本企業は自社の強みや特徴を十分に活かし、差別化を図ることで競争力を高めることが必要です。また、消費者の信頼を得るために、品質管理やカスタマーサポートの充実にも力を入れましょう。
アメリカでの越境EC展開は、大きなチャンスとともに、様々な課題やリスクも伴います。しかし、適切な戦略や準備を行い、日本企業が持つ強みを活かすことで、成功する可能性は高まります。海外進出を検討する日本企業は、アメリカ市場の特性やニーズを理解し、戦略的な越境EC展開を目指していきましょう。

WRITER
弁護士 小野 智博
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。EC企業からの相談に、法務にとどまらずビジネス目線でアドバイスを行っている。
また、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約書をレビューする「契約審査サービス」を提供している。
著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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代表弁護士 小野智博(東京弁護士会所属)
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