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越境ECプラットフォームとは
越境ECプラットフォームは、企業が自国以外の市場に商品やサービスを提供するための電子商取引(EC)プラットフォームです。主に「自社型越境ECサイト」と「現地モール型越境ECサイト」の2つの形態に分かれます。この記事では、2024年における市場動向を踏まえ、それぞれの特徴と違い、一定のメリット・デメリットを紹介していきます。
自社型越境ECサイト
自社型越境ECサイトは、企業が独自に運営する越境ECサイトのことで、特定のプラットフォームに依存せず、独自のサイトを構築して、多くの国の顧客に直接アプローチする形態です。万が一、運営において課題が生じた場合でも、自社での対応が可能となるため、柔軟に問題を解決できる利点があると言えるでしょう。以下で、自社型越境ECサイトの主な特徴、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
自社型越境ECサイトの特徴:自社型越境ECサイトは、ECモール(Amazonやアリババグループなどのプラットフォーム)を利用せず、企業が独自に設計、制作し運営するECサイトです。企業自身が商品の掲載、価格設定、サイトデザイン、マーケティング戦略をすべて管理できます。代表的なプラットフォームとしては、以下のようなものがあります。
Shopify
高いカスタマイズ性を誇り、越境EC対応機能が充実しています。多言語対応や現地決済方法の導入が簡単で、世界中で利用されています。初心者でも使いやすいインターフェースが特徴で、短期間で越境ECを立ち上げやすいです。また、豊富なテンプレートが用意されており、デザインの選択肢も多いため、手軽に魅力的なオンラインショップを作成できます。
WooCommerce(WordPress連携)
オープンソースで柔軟なカスタマイズが可能です。特にWordPressとの連携が強力で、既存のwebから越境ECを立ち上げやすいです。初心者にも比較的取り組みやすい選択肢ですが、ある程度の技術的な理解が必要です。テンプレートも多く、コーディングなしで自分好みのデザインに仕上げることができます。
Magento
大規模な企業向けのCMSで、カスタマイズ性が高いですが、その分開発や運営に高いスキルが求められます。初心者にはハードルが高く、専門的な知識や技術が必要となる場合があります。テンプレートも豊富にありますが、企業のニーズに合わせて高度なカスタマイズが求められる場合が多いため、注意が必要です。
自社型越境ECサイトのメリット
ブランドの独自性と自由度:自社型サイトでは、サイトデザインやユーザー体験を自由に設計、制作できるため、ブランド独自の世界観を反映させやすいです。また、顧客に対して直接アプローチできるため、ブランディングやファン育成にも役立ちます。これが、長期的なブランドの成長に寄与することが言えるでしょう。
顧客データの収集と分析:自社型サイトでは、顧客アカウントの購買データや行動データなどの情報を詳細に追跡し、蓄積することができます。これにより、消費者の嗜好や傾向に合わせたマーケティングや商品戦略の調整が可能となります。これが、リピート購入や顧客ロイヤルティの向上に役立ちます。
手数料がかからない:一般的なECモールでは販売手数料がかかりますが、自社型サイトではその負担がなくなります。初期構築費用や運営コストはかかるものの、長期的には収益性を高めることができます。
自社型越境ECサイトのデメリット
初期投資と運営の手間:独自にサイトを構築するため、デザインやシステム開発、運営に関する費用や労力が必要です。ECサイトを初めて構築する場合、プラットフォームの選定やサイトのデザイン、ユーザーエクスペリエンス(UX)の最適化が重要な課題となります。
集客とマーケティングの難易度:自社型サイトでは、既存のECモールの流入トラフィックが使えないため、ゼロからの集客が必要です。SEOやSNS、広告キャンペーンなど、マーケティングにおける多角的なアプローチが求められます。
ロジスティクスとカスタマーサポートの確立:国際配送、返品対応、現地でのカスタマーサポートなど、越境ECならではの物流やサポート体制が必要です。現地パートナーと提携することで、こうした課題に対処する方法もあります。
現地モール型越境ECサイト
現地モール型越境ECサイトは、現地の消費者向けに運営されている大規模なECモール(マーケットプレイス)に出店し、商品を販売する越境ECの形態です。このスタイルは、Amazonやアリババといった複数のプラットフォームに出店することで、現地の消費者にアプローチできるのが特徴です。また、越境EC事業を円滑に進めるためには、出店先のモールが提供するガイドラインに基づき、適切な出店計画を設立することが重要です。以下で、現地モール型越境ECサイトの主な特徴、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
現地モール型越境ECサイトの特徴:現地モール型越境ECサイトでは、既に多くの顧客が集まっている現地の人気プラットフォームに出店し、そのプラットフォームが提供する集客・販売のサポート機能を利用して商品を販売します。また、出店時には各プラットフォームが用意する料金体系やサービス内容に応じたプランを選ぶ必要があります。以下が代表的なプラットフォームです。
アメリカ:Amazon、eBay、Walmart Marketplace
中国:Tmall Global(天猫)、JD.com(京東)、Pinduoduo(拼多多)
東南アジア:Shopee、Lazada
ヨーロッパ:Zalando、Allegro、Rakuten France
現地モール型越境ECサイトのメリット
集客が容易:現地のモール型ECプラットフォームには既に多くの消費者が集まっているため、企業は自社で集客を行う手間を省けます。各プラットフォームには膨大なトラフィックがあり、特に高い認知度を持つプラットフォームを利用することで、現地でのブランド認知も向上しやすくなるという点もあります。
信頼性の向上:現地の消費者にとって、馴染みのあるプラットフォームでの販売は安心感を生みます。現地プラットフォームには、消費者が商品レビューや評価を投稿するシステムがあるため、評価を通じて信頼性を高めることが可能です。また、プラットフォームが提供する決済や配送のサポートも信頼性の向上につながります。
物流・カスタマーサービスのサポート:多くのプラットフォームは、物流(フルフィルメントサービス)や現地でのカスタマーサポートを提供しています。これにより、国際発送の手間が軽減され、現地の配送や返品対応もスムーズに行えます。例えば、AmazonのFBA(Fulfilled by Amazon)では、海外からの商品の倉庫保管と発送を一手に引き受けるため、スピーディーな配送が実現できます。また、一部のプラットフォームでは、特定条件下で無料のカスタマーサポートや初期設定サービスを提供する場合もあり、越境EC事業者にとって大きな助けとなります。
現地モール型越境ECサイトのデメリット
プラットフォーム手数料が発生する:現地モール型サイトでは、出店料や販売手数料、フルフィルメント利用料などが発生します。これにより、自社型サイトと比べて利益率が低くなる可能性があります。プラットフォームごとに手数料は異なります。どのプラットフォームを利用するかによって、コストの計算が必要です。
自由度の制限:現地モール型では、プラットフォームのルールに従って運営しなければならないため、自由なデザインやブランド表現が難しいです。また、顧客データや情報へのアクセスも制限されていることが多いため、直接的な顧客関係の構築がしづらい面もあります。
競争の激化:人気のあるプラットフォームには、同業他社や類似商品の出品が多数あります。そのため、他社と差別化を図り、プラットフォーム内でのランキングやレビュー評価を高めるためには、自社型越境ECサイトの運用以上に工夫が必要です。
現地モール型の越境ECプラットフォームを地域別にご紹介
現地モール型の越境ECプラットフォームを地域別に見ていくと、それぞれの市場に適した大手プラットフォームがあり、消費者のニーズや消費習慣に応じた戦略を取ることが可能です。以下にアメリカ、中国、韓国、その他アジア圏、ヨーロッパの主要プラットフォームについて一覧にします。
アメリカ
アメリカ市場はさまざまな消費者層が存在し、越境ECの需要が非常に高いエリアです。以下のプラットフォームが主に活用されています。
・Amazon:世界最大のECプラットフォームで、米国市場でのシェアが非常に大きいです。自社製品を出品するD2CモデルやFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)を利用することで、スムーズな配送サービスやカスタマーサポートを提供できます。また、多国展開が容易で、アメリカをはじめとする広範囲な物流ネットワークを活用できます。Amazonでは家電、日用品、ファッション、食品まで幅広いジャンルの商品カテゴリが支持されています。
・eBay:オークション形式で知られるeBayも越境EC向けのプラットフォームとして有効で、特に中古品や希少なコレクター向けアイテムが人気です。自由な価格設定が可能で、アメリカ国内外のバイヤーにリーチしやすいのが特徴です。
・Walmart Marketplace:実店舗の強みを活かして急成長しているオンラインマーケットプレイスです。比較的厳しい審査を経て出店するため、品質にこだわるバイヤー層に訴求できるのがメリットです。
中国
中国市場は越境ECの利用者が増加しており、特に品質の高い輸入品やブランド品に対する需要が高まっています。以下のプラットフォームが代表的です。
・Tmall Global(天猫国際):アリババグループが運営する越境ECプラットフォームで、「中国版Amazon」と言われるほど、中国市場に強いB2C市場に特化しています。信頼性が高く、ブランド品の出店に適しています。数ある商品の中でも、自社のブランド認知度を高めるための認証や中国国内物流のサポートが充実しているのが特徴です。物流サービス「菜鳥ネットワーク」による迅速な配送が可能です。
・JD Worldwide(京東国際):JD.comが提供する越境ECプラットフォームで、特に家電や電子製品に強みがあります。JDの物流インフラを活用できるため、スピーディーな配送が可能です。
・Pinduoduo(拼多多):低価格品が人気のECプラットフォームで、共同購入型のシステムが特徴です。特に若年層に人気があり、広範囲な商品カテゴリーを扱っています。
韓国
韓国市場は流行に敏感な消費者が多く、ファッションや美容品の需要が高いのが特徴です。
・Coupang:韓国で圧倒的なシェアを持つECプラットフォームです。「ロケット配送」に代表される迅速な物流サービスが強みで、海外ブランドやショップも多数参入しています。食品、生活用品、美容商品などが特に人気です。
・Gmarket:eBay Koreaが運営しており、B2C向けの越境ECプラットフォームで、韓国国内外に強い影響力を持っています。韓国特有の消費トレンドに合わせたマーケティングが必要ですが、韓国国内でのリーチが強みです。韓国市場でのブランド認知度を高めやすいです。ファッション、家電、美容製品がよく販売されています。
・11st(11번가):SKテレコムが運営する大手ECプラットフォームで、韓国国内向けの販路拡大に役立ちます。多様な支払いオプションがあり、韓国での認知度も高いです。
その他アジア圏
その他のアジア圏では、東南アジア市場が特に成長しており、ECの普及が進んでいます。以下のプラットフォームが代表的です。
・Shopee(東南アジア):東南アジアで人気のシンガポール発のECプラットフォームで、各国の言語や決済方法に対応しています。地域特有のプロモーション(フラッシュセールやライブコマース)を活用できます。
・Lazada(東南アジア):東南アジアの6カ国(シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナム)で利用されているアリババグループのプラットフォームです。豊富な商品カテゴリーがあり、物流サービス「Lazada eLogistics」で効率的な配送を実現しています。
・momo購物網(台湾):台湾で人気の高いオンラインショッピングモールで、美容、家電、ファッション分野で特に強みがあり、女性ユーザーが多く、会員限定の割引やポイントプログラムが魅力です。
ヨーロッパ
ヨーロッパ市場では国ごとに異なる消費習慣があるため、地域別のECプラットフォームが強みを発揮し、顧客獲得を効果的に行っています。
・Zalando(ドイツ):ドイツ発のファッションに特化したECプラットフォームで、ヨーロッパ市場で高い知名度を持っています。ファッション関連ブランドの参入が進んでいるため、欧州市場でのファッションブランド展開に有利です。
・Allegro(ポーランド):東ヨーロッパを代表するECプラットフォームで、ポーランド国内で非常に高いシェアを持っています。家電、日用品、アパレルなど多様な商品を取り扱っています。
・Cdiscount(フランス):フランスの大手ECサイトで、家電、日用品、食品などが中心。フランス国内に多くの顧客を抱えており、フランス市場をターゲットとする企業に向いています。
越境ECプラットフォーム導入の際に考慮すべきポイント
越境ECプラットフォームを導入する際には、成功に向けて慎重な計画と戦略が必要です。どのようなプラットフォームであっても、越境ECでは物流が肝になります。そのため、現地物流ネットワークを活用し、速やかで信頼性の高い配送体制を構築することが重要です。また、現地消費者が使いやすいように、サイトや商品ページを多言語対応にし、現地の文化やニーズに合わせたローカライズが必要です。さらに、越境ECプラットフォームのアプリを提供することで、消費者がモバイルから簡単にアクセスでき、利便性が向上します。その他、購入後のサポートや返品対応も検討する必要があります。現地でのサポート窓口を設けたり、FAQやチャット機能で迅速な対応をすることが顧客満足度向上につながり、サイト登録者も増加します。
さらに、これらの重要な要素を正確に理解し、効率的に導入を進めるために、越境ECに関する専門的なセミナーに参加することも有益です。セミナーでは、物流、ローカライズ、顧客対応の成功事例や最新の市場動向について学ぶことができ、実践的な知識を得られます。
次に、自社型サイトと現地モール型サイトそれぞれの特徴を活かし、以下の主要なポイントを考慮すると効果的です。
自社型越境ECサイト運営のために考慮すべきポイント
(1) 多言語対応とローカライズ:日本語だけでなく、各国の言語に対応したサイトを作成し、現地の文化や消費習慣に合わせた内容を提供する必要があります。特に、商品ページやFAQ、カスタマーサポートは現地語での対応が求められます。
(2) 決済手段の多様化:各国で使用されている決済方法や通貨を取り入れることで、顧客の購入ハードルを下げることができます。例えば、東南アジア向けにはQR決済、アメリカにはクレジットカード、ヨーロッパではPayPalのように、現地に合わせた決済オプションや対応通貨の種類を提供することが大切です。
(3) 海外物流・配送体制:商品の輸送・配送がスムーズに行える物流パートナーの確保が重要です。配送時間を短縮するために現地倉庫の活用や、配送ネットワークの拡充が有効です。また、返品や交換対応の体制も整えておくことが顧客満足度に影響します。
(4) 集客戦略:広告(Google広告、Facebook広告)、SNS、SEO対策を組み合わせて、ターゲット市場に適したマーケティング活動を展開することが必要です。インフルエンサーマーケティングも有効な手段で、現地でのブランド認知度向上に役立ちます
現地モール型越境ECサイト運営のためのポイント
(1) プラットフォームの選定:ターゲット市場や商品の特性に応じて適切なプラットフォームを選定することが重要です。例えば、ファッションブランドであれば、ヨーロッパのZalandoや、韓国のCoupangのように、各プラットフォームの利用者層に合わせた選択が効果的です。
(2) SEO対策とレビューの活用:プラットフォーム内でのSEO対策(商品タイトルや説明の最適化)や、レビュー管理は売上に大きく影響します。顧客のレビューを増やし、評価を高めるための施策(例えば、レビュー特典やサポート対応の充実など)を行うと、検索結果での上位表示につながりSEO対策となります。
(3) ローカライズとプロモーション:現地消費者の文化や嗜好に合わせたローカライズが求められます。特に、言語や画像、価格表示を対象となる現地に最適化することで、消費者個人に親しみやすさと信頼感を提供します。また、現地のセールイベント(ブラックフライデーや中国のダブルイレブンなど)に合わせたプロモーションも、売上向上のために重要です。各地域のイベント日程や成功例をまとめた資料を用意すると、プロモーション施策の計画がスムーズに進みます。
(4) 現地の物流と返品対応:現地プラットフォームのフルフィルメントサービスを利用する場合、配送スピードや返品対応の手続きが簡素化され、顧客満足度が向上します。各プラットフォームの配送オプションや返品ポリシーを把握し、それに適合する商品管理が必要です。
越境EC事業に関するお悩みは専門家にご相談ください
越境EC事業に関するお悩みは、事前の調査と専門家へのご相談がおすすめです。越境ECは、グローバルなビジネス機会を提供しますが、その成功には専門知識と十分な調査が必要です。各国市場に応じた物流、法律、マーケティング戦略の構築が求められ、例えば日本から商品を発送した場合にかかる関税の徴収に関してなど、複雑なプロセスが伴います。そのため、海外進出の事業を円滑に進めるために、事前に重要なポイントを確認し、専門家に悩みをまとめて相談しサポートを受けることが重要です。また、また、現在の市場動向や競合分析を徹底的に取得し、現地での拠点の有無やその役割を用意して検討することが必要です。例えば、成功事例のケースを参考にすることで、実際の進出戦略がより具体的に描けます。
自社型越境ECサイトの場合、ブランド管理や顧客データ収集に優れており、企業独自の価値や魅力を伝える手段として有効です。しかし、初期投資や運営負担が大きいため、税務、法規制、物流などの専門的な知識を持つコンサルタントの協力が不可欠です。さらに、進出する市場の消費者行動や競合環境を徹底的に調査することで、運営戦略の成功確率を高めることができます。また、現地通貨での取引に対応する仕組みを構築することで、顧客の利便性をさらに向上させることができます。
現地モール型越境ECサイトの場合、既存のプラットフォーム(Amazon、Tmallなど)を活用する現地モール型では、顧客への迅速なアクセスや物流が強化されますが、競争やコストの面で課題があります。自由度に制限があるため、商品ラインナップやサービスのローカライズが成功のカギとなります。
多国間の規制、税務、物流、マーケティングに精通した専門家やパートナー企業と連携することで、効率的な運営が可能になります。こうした専門家のサポートや徹底した調査により、企業は越境ECの課題を克服し、ビジネスを拡大させることが期待できます。